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第三十週:帝と蛇と死刑囚(月曜日)

 さて。


 ある時代のある時ある夜のこと、ある宇宙のある惑星ある国の皇帝が夢を見た。


 誰も居らぬ御政の門を往き、孔子の像が祀られた小室の前を過ぎる。辺りはいつの間にか暗闇となってはいたが何故かすべてがよく目に映る。


 四季折々の花々を矛盾することなく咲き誇らせた木々が茂る御花園へと歩み出で、玄天上帝の社殿にたどり着いたところで皇帝は、何者かの気配に気が付いた。


『かくまってください』


 と、その何者かが自分の足元に跪き懇願していることが分かり、皇帝は一も二もなく聞き入れた。――どうやら童女のようである。


「一体、何から逃げておるのだ?」と皇帝が訊くと童女は、


『私の身体を望む者からです』と答えた。


「その者はいま何処に?」と皇帝が訊くと、


『あらゆる所に居ります』と童女は答える。


 それから童女は、北の空を見上げると、そこに輝く天狼星を暫く見詰めた後、星廻りによれば翌日、夜になる前に、皇帝の大臣、尹晟が彼女を連れに来るのだと言う。


「我が臣下の尹が?」と、皇帝は少し驚いて訊いた。「そのような者ではない筈だが」


 すると童女は、星からの明りにその氷種黒曜石の瞳を潤ませつつ、


『陛下がご存知の彼とは違うのかも知れません』と、言った。


 そこで皇帝は、童女の肩を軽く掴むと、


「なるほど、はっきりとしたことはよく分からぬが」と、夢のなかで、童女に約束をした。「お主は朕が守ってやろう」


     *


 と、ここで皇帝の夢は終わり、彼は東六宮の一室で目を覚ました。隣で寝ていた筈の皇后は既に起きて消えたようである。


「誰か居らぬか?」そう皇帝は近侍の宦官を呼ぶと「尹晟の所在を調べて来い」と言った。



(続く)

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