第二十九週:無限と修道士(土曜日)
「あー、でも、木花さんは前から高かったですよね?」と、小張千春が訊き、
「そうそう。それで男の子に間違われることも多くて――」と、佐倉八千代が応え、
「ヤッチと歩いてるとカップルに間違われることもよくあって――」と、木花咲希が続けた。
ここは西暦2019年4月25日。木曜日。地球。日本。東京都練馬区石神井公園。くつろぎ広場――の、とある東屋であるが……、
*
あれ?
「公園だね」
公園ですけど…………なんか想っていたのと雰囲気違いますね。
「雰囲気?」
ほら、例の地球破壊の時に地球中の植物が急激な成長を遂げたって話知りません?
「ああ、セイの兄さんに聞いたな。それでゾウリンダイの劫火を防いだんだろ?」
そうそう。Mrの 《促成栽培ライト》を使ったらしいんですけど…………なんか、みんな普通の木々ですね。
「元に戻ったとかじゃないの?」
*
「いつも通りですよね?」と、小張が言い、
「想い付くままダラダラと」と、咲希が続け、
「考え無しに書き始めるの悪いクセですよ――」と、佐倉八千代が言った。
*
「……樫山さん、どうかした?」
いや、なんか今、耳と心が痛くなるようなセリフが聞こえた気がしたんですが…………アレ?
「なに?」
あそこにいるのウチのスタッフですね。
「どれ?あの女の子たちのこと?」
ええ、あの中の一人が確か……あ、やっぱりだ!――オーイ!坪井くんじゃないか?!
(続く)




