第二十九週:無限と修道士(木曜日)
「違う、違う、違う、違う、違う!!」
と、叫んだのは、とある騎士団の講習会に招かれ 《最大剋星龍捲風》についての説明を試みているイン=ビト王である。
「“無から有を生じさせる”んちゃう、そんなこと出来るハズがなかろうが?!」
と、居並ぶ屈強な騎士たちに向け王は言うが、どいつもこいつも脳みそ筋肉のせいか、それとも先ほどシェルター越しに見た王の技の印象が強烈過ぎたせいか、皆が皆、
『?????』
と云う顔で王を見ている。
「ほじゃけえ、腕をこう十字に構えるじゃろう? すると、こう、時間がグググググググィッと遡るような感じになるじゃろ? ほいで、それをドンドンドンドンドンドン遡らせれば遡らせるほど、こう、熱い玉?みたいなんが出来て来るような気がするやろ? で、それを行けるとこまで行かせて、ドンッと爆発させる!……これでエエんじゃ」
と、満足そうな感じに王は言い、
他の騎士たちは引き続き『?????』と云う顔をしている。
すると、ある若い騎士が意を決したのか、
「すみません、それは周囲から気を集める感じですか?」
と王に訊いた。
が、しかし王は、
「違う違う、そんな 《元〇玉》みたいなもんとちゃう」
と、にべもなく答えた。
「ここには、ただ 《玉》があるだけじゃ」
すると今度は、また別の中年騎士が、
「四次元ウェストポーチから秘密道具を出すイメージに近いかと想ったのですが?」
と訊いたが、
これに対しても王は、
「それとも違う。 それでは“向こう”にある力しか使えん」
と、またしてもよく分からない感じで答えた。
「何故分からんかのお? この世に 《無限》なんてものはないじゃろう? ほじゃから、その 《無限》のギリギリ一歩手前で止めておけば、そのギリギリまで 《玉》は熱くなるんじゃ」
(続く)




