第二十八週:汗と涙と膨張と収縮(木曜日)
『ええ、それはこちらでも確認しました』
そう亜空間通信の向う側で言うのは、タイムパトロール史料管理部所属のランダム・マクシミリアン・マクミラン教授である。
『あの日Mr.Bが使用した生体チェッカーにも生体コントローラーにもリミッターが外された等の形跡は見当たりませんでした』
すると、この彼女の言葉を受けて件の不定形生物Mr.Bは、
「ナ、ナ、言ッタ通リダロ?」
と、亜空間通信のこちら側に立つ博士とストーン女史を責める口調で言った。
そうしておいて彼は、画面の向う側の教授に、媚びるような口調で、
「コイツラ勝手二ひとヲ犯人扱イシヤガッテ失礼ッタラナインデスヨ」
と、言った。
画面こちら側のチビや赤毛とは違い大人の雰囲気たっぷりのマクミラン教授はMr.Bのお気に入りだったりなんかする。
「教授カラモ注意シテヤッテ下サイヨ」――胸モ大キクテ優シイシナ。
すると、そんな彼の気持ちを知ってか知らずか教授は、
「でもねB、私達TPの技術は銀河の記憶や歴史、場合によっては時空間そのものすら大きく変えかねない力を持っているのよ」
と、この物語ではとんと見掛けなくなった大人な口調で彼に言った。
「だからこそ我々の技術は門外不出・口外法度、問題が起きたら先ず仲間を疑う所から始めないといけないの――分かって貰える?」
おお、なんか普通にSFっぽいですね。
「ソレハ、ソウデスケド……」と、Mr.B。
「分かってくれて嬉しいわ」――いまは仲間割れとかしてる場合じゃなさそうだしね。
「だからねMr.B、二人も十分反省しているようだし、引き続き調査に協力してあげて欲しいの――どうも、西銀河周辺域の時空連続体の不安定度が増しているようなの」
(続く)




