第二十八週:汗と涙と膨張と収縮(水曜日)
「シツッコイナア、コノ前ノいぇしゅあトカッテ兄チャンノ時ニ散々言ワレタカラ、生体ちぇっくハきちんトスルヨウニシテルヨ」
と、今日もブヨブヨフワフワしつつ不定形生物Mr.Bは言った。
彼は今回、『騎士学校の人が気味悪がるかも?』との理由だけで留守番をさせられていたので、少々と云うか大層機嫌が悪い。
「大体、ちぇっくかーどガおーけーシナイト生体こんとろーらーニモろっくガ掛カッタママナンジャナイノカヨ?」
と、B。
すると、この答えとツッコミに少し考えてから博士は、それでも、
「確かに、この前の一件を受けてコントローラーは改造しましたけど…………ほら、あなた変に頭が廻るから――」
と、言った。
「頭ガ廻ルカラナンダヨ?」
「勝手にリミッター外したりするでしょ?」
と、流石にこの言葉にはカチンと来たのかMr.Bは、その場で飛び上がったり飛び下りたりしては身体全体を真っ赤にして、
「フザケンナヨ!コチトラ腐ッテモたいむぱとろーる隊員ダゾ?!」
と、怒りも露わに言った。
――隊員だったの?!
「ソンナニ疑ウンナラこんとろーらーナリちぇっくかーどナリノろぐヲ見テミロヨ!」
*
「えーっと、それでなんじゃったかな?」
と、学校長が言い、
「えーっと、ほら、アレですよアレ」
と、ス・イゲイが応えた。
「“イグ=バリ”と云う男の素性を確認しに……行く?……とか?」
「……誰が行くのじゃ?」
「…………はて?」
と、さて。
こちらは引続き騎士学校の応接室である。
であるが、いまは既に博士とストーン女史の二人が立ち去った後であり、そのためTPの記憶改変装置“レーテー”の作用により二人の記憶は彼らの中にはない。
であるからして、学校長とイゲイはこのような頭にモヤのかかったような会話をしているのであるが、困ったのはここに同席していたシャーリーとロン=カイの二人である。
何故なら、彼女と彼の頭には、何故かハッキリ&クッキリと、博士とストーン女史の記憶が残されていたからである。
*
「あの」
と、困った顔でシャーリーが言った。
「調査には先ほどのお二人が行くのでは?」
すると、先ずは学校長が、
「二人?」
と、目をあらぬ方向に向けて言い、それに続けてイゲイが、
「シズカは動けぬし、ギゼ殿は彼女の付き添いで頼めんぞ」
と、酒臭い息のままに言った。
そこで彼女は更に困って、
「あの…………タイムパトロールのお二人が行かれるのでは?」
と、改めて訊いたが、
「TP?」
と、遠い目をしたイゲイに、
「ワシャ今まで見たこともないぞ?」
と言われた。
(続く)




