第二十八週:汗と涙と膨張と収縮(月曜日)
チーン。
ブブーッ。
と、赤毛のタイムパトローラー、ライリー・ストーン女史の鼻をかむ音が応接室内に響き渡り、
「ちょっとライリーさん、もう少し静かにかめませんか?」
と、それをたしなめる博士の声がそれに続いた。
すると、その青い目をウサギのように真っ赤にしたストーン女史は、
「すみません、すみません」
と、一応は謝ったものの、こちらを見る騎士学校の面々、特にロン=カイ少年の赤くなったその額を見るやいなや、ふたたび感極まったのだろうか、
ブビビー、
ズビズバーッ。
と、汗とも涙とも鼻水ともつかない何かを一斉にかんだ…………汚いなあ。
「だってだって、あの人に対するロンさんの想いを考えると…………ごめんなさい、もうもう、私ってば最近、涙腺がゆるくって――」
……おばちゃんくさいなあ、もう。
*
えーっと……。
さて。
と云うことで、カイ少年の突然の土下座劇により話が大分それた上にストーン女史がてんで使い物にならなくなってはいるものの、それはそれとしてタイムパトロールのお仕事は進めなければならない。
と云うことで、続きを博士よろしく。
*
「えー、では、ス・イゲイさん?」と、改めて博士が訊き、
「ああ、はい。なんでしょうか?」と、ついつい熱くなってしまった先週の自分を照れ臭く想い出しながらイゲイは応えた。
すると、
「実は今回の一件なんですが、カクカクシカジカ、アレコレドーノコーノ…………と云う現象が見受けられていまして――」
と、適当な感じに博士が喋り出し、
「ああ、なるほど。それでは、そのカクカクシカジカ、アレコレドーノコーノ…………を引き起こした原因に心当りがないか訊きたい……と云うことですな?」
と、こちらも適当と云うか当意即妙な感じでイゲイが応え――あれ?通じてるの?
「そうなんですよ、話が早い」
「まあ、紙数も限られておりますし」
「ではでは、作者の負担を減らすためにも、私が“ツー”と言いましたら、」
「ワシは“カー”と答えておけばよろしいですかな?」
「“阿”」と、博士が言い、
「“吽”」と、イゲイが返した。
「いやはや、TPにこれほど武道・武術の心得のある方がおられるとは想いませんでしたよ」
「あ、これは、ゴルドベルク星の方から教えて頂いたコミュニケーション技法で」
「お!貴女もあそこに行かれましたか?!」
と、二人の会話は弾みに弾…………うん?いや、私の手抜きじゃありませんよ?
(続く)




