第二十七週:終わらぬ戦と飲酒癖(木曜日)
ハアー。
と、ス・イゲイは、鯨のように大きな口を更に大きく開けて息を吐くと、
「どうじゃ?」
と、訊いた。
すると、その大きく頑丈そうな口の奥にひときわ大きい口蓋垂と立派に生え揃った四本の親知らずを確認した我らがシャーリー・ウェイワードは、少々困った顔で、
「ダメです、全然」
と、答えた。
「そんなに簡単に消えるものではないと想いますよ」
「そうか?」
「お酒を飲んだことを隠したいのなら、飲まないのが一番ですよ」
「それが出来れば苦労はないよ」
「どうせ皆さん知っていますから、さあ、早く入りましょう」
*
「なるほど、これは 《ラット》ですな」
と、自分の息が学校長の方へ流れないよう注意しつつイゲイは言い、
「私の見立ては 《トラット》か 《レイスポル》だったのだが、違うかな?」
と、学校長が返した。――イゲイの奴、また飲んでおるな?
するとイゲイは、
「《レイスポル》にしては跡が細く、《トラット》にしてはアーミング痕がない」
と続けてから、目の前の少年の背中を、パシン。と軽く叩いた。
「それよりなにより、よく生きていたな?普通なら死んでおるぞ」
と、冗談交じりに言ってはみたものの、言われた本人からは返事がなく、代わりに彼は、ジッ。とその鋭い瞳をイゲイに向けている。
「なんじゃ?褒めておるのだぞ?何か言ったらどうだ?」
「あ、それがな、イゲイ――」
と、学校長が口を挿もうとしたその時、問題の少年――傷だらけのロン=カイは、その場にひざまずくと、床に額をこすり付け、我が邦で云うところの土下座の格好を取った。
(続く)




