表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/331

第二十七週:終わらぬ戦と飲酒癖(月曜日)

 さて。


 と云うことで、その後に起こったことを箇条書きにすると次のようなことになる。


 ①“シズカ”の放った衝撃波は、何故か、少年の胸部からは大きく外れ、彼の左頬に小さな切り傷を残しただけで、彼の後方へと消えて行った。


 ②その代わりに、消えて行った衝撃波は、プラネタリムの壁に当たり、周囲に大小の破片を撒き散らすことになった。


 ③また、丁度その頃、階下の男性と“黒の少女”との駆け引きにも決着が付き、結果は先に事を仕掛けた男性側の勝利に終わった。


 ④その為、“穴”は収縮を始め、それに合せてフォースフィールドも収縮を開始、“黒の少女”と“シズカ”、それに彼女たちに巻き込まれる形でフラウス少年をも“穴”に引き込もうとした。


 ⑤が、それに先んずること十数秒――と云うかこの際時間は関係ないとも想うのだが……つまりは、少年と“シズカ”が上層階から落下を始めた直前、この事態を“予知”した少年の身体は、相手と戦うのではなく、相手を抱き締めるべきとの選択を行っていた。


 ⑥そうして、その彼の身体の選択通りに落下ルートは変更され、更には“シズカ”の衝撃波で撒き散らされた破片――その中でも特に大きな破片が、フラウスの代わりに“穴”に引き込まれることになった。


 そう。


 フラウスの身体が“予知”していた『自身が“穴”に引き込まれる 《未来》』は、その身体自身が時間を 《フライング》することで、既に回避されていたのである。


     *


 ジジジジジ。


 と云う珍妙な音がして、ラチェットレンチが“穴”のあった辺りを走査し始めた。


「大丈夫か?」と、まだモヤモヤとする視界のままに男性が訊き、


「ええ、なんとか」と、フラウスは答えた。「身体はなんともないですし」


「……どこまで分かっているんだ?」


「……なにをですか?」


「普通、こんな状況で“なんともない”ってのはよっぽどのことだろう?」


「あ、まあ……運が良かったんですかね?」


「あのな、少年――」


 と、男性が話を続けようとしたところで、


 チッチキチー、


 チッチッチ、


 チーーン。


 と、レンチが一層珍妙な音を立てたので、この会話はここで中断されることになった。


「すまないが、目盛りを見てくれないか?」


 と、フラウスの方にレンチを向けながら男性。


「ヤツらのせいでまだよく見えないんだ――丸い部分の数字と色を教えてくれれば良い」


「これですか?」


 と、その珍妙な道具を覗き込みながらフラウス。


「緑の……73です」


「そうか――」


 そう言うと男性は、やっと安心したのだろうか、その場にへたり込むと、


「いやはや、久々に疲れた」


 と言った。



(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ