表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/331

第二十六週:身体と脳とフライング(月曜日)

 さて。


 例えば、西暦2020年代の地球における陸上競技を想い出してみよう。


 そう。


 それは例えば100m走みたいなもので良いのだが、ある年のある競技会のある決勝戦。


 スターティンググリッドにはこの日この時のために何ヶ月も何年も掛けて身心のコンディションを整えて来た選手たちが並んでいる。


 場内は静まり返り、観客たちはいまや遅しとスタートの瞬間を待っていた。


 すると、その静寂を打ち破るように号砲が鳴り響き、選手たちは一斉に飛び出す。


 が、と、想った次の瞬間、一瞬の間を置いて、ふたたびピストルの音が場内に鳴り響く。


 選手の誰かがフライングをしたのである。


 スタンドからはため息が漏れ、審判団は機械の周りに集まって行く。


 それから、審判団による「あーだこーだ」の協議が行われ、そのうちの一人がスタート位置に戻った選手たちの前へと歩み寄る。


 そうして、その審判は、ある選手に向け失格の札を上げると、彼の 《フライング》について指摘するのである。


     *


「どうなってる?!」と、階下の男性が、未だ見えてくれない目のままに訊くと、


「あ、あの、あの、実際――」と、動揺を隠せないままにフェテスが言ったので、


「フラウス君が女の人と一緒に落ちたの!」と、彼の代わってエリシャが答えた。


 すると男性は、少し苛立った様子で、


「装置は?!」と二人に訊いて来たので、二人は同時に、


「押した!!」と、答えた。


 と、直後、


 ぷぷぷぷぷぷぷぷぷ。


 と云う珍妙な音がして、“穴”の周りを取り囲んだ五つの点――男性特製の缶バッヂ型フォースフィールド発生装置――が、フィールドを発生させ始め、


 と同時に、“穴”の位相が反転を始めた。



(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ