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第二十五週:踏み台と抱擁(水曜日)

 ジジジジジ。


 と云うラチェットレンチの音に共鳴するかのように、


 クヮッワヮン。


 と云う音がして、宙に浮かんだ青い点――缶バッヂみたいな形の何かの装置 (虹色五個セット)――が、一斉にその仕事を始めた。


『今度はフォースフィールドか?』


 と、自身の――いや、“抜け穴”の周りに撒かれた五つの点を交互に見詰めながら“黒の少女”が言った。


 すると、この言葉が聞こえたのだろうか、


「そうだが、それだけじゃあない」


 と、男性はひとり呟くと、再び上階にいるフェテスに向けて今度は、


「いいぞ坊や!そのまま残りの点にも信号を送れ!!」


 と言った。いまだ目は見えないが音の感じで上首尾であることは分かる。


「了か……あ、でも実際、順番とかは?」


 と、フェテスが訊き、


「時計回りだ!」


 と男性が叫ぶ


 ――と同時に、


 ひょおっ。


 と云う音がし、その瞬間、フェテスの前の空中に一人の女性が現れた。


 白いブラウスにエシクスオオダケで編まれた特製の竹甲、左の目は潰れているのだろうか?甲と同じ若竹色の眼帯を当てている。


 そんな彼女の姿に、フェテスは一瞬、その目と心を奪われ掛けたが、


「フェテス君!」


 と叫ぶフラウスの声に我に返ると、直後、いままでに感じたことのない恐怖に全身が覆われていることに気付いた。


 女性は明らかに、レンチを持つ彼の左手と、その延長線上にあった彼の頸を同時に、その白い腕で“斬る”つもりであった。


「早く装置を!」


 と、再びフラウスが叫んだ。


 どうやったのか彼はいま、歩廊の手摺りの上にしゃがみ立ち、女性の手首を掴んでいる。


『へえ』


 と、驚く素振りも見せずに女性は微笑むと、次の瞬間、


『いまのに反応出来んだ?』


 と言って、今度は彼の右耳を狙った。



(続く)

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