第二週:コーギーとテリア(木曜日)
タイムボックスの中は荒れた天気模様であった。
と、こう書いてみて、これを人間関係の比喩の様なものと捉えられても困るので、もう少し具体的に書くと――、
タイムボックスの中では最大瞬間30mの風が巻き起こり、毎時約80mmに近付かんとする大雨と 《全主》族を想わせる雷が同時に発生していた。
――と、こう書くことになる。
「なんでウェザーボールを開けたのよ!!」と、紺色のブラウスに赤い髪の女性が叫び、
「博士ガ電池ハ抜イタッテ言ッテタジャナイカ!!」と、叫ばれた方の…………なんだこの黄色と云うか緑と云うか間違ったクラゲオバケみたいな生物は???――が言い、
「こんなところでトリトロンメタジウムのバッテリーを抜けるわけないでしょ!!」と、白いジャージに黒髪の少女――これが“博士”ね――が叫び返した。「アンタに抜いちゃダメよって言ったのよ!!」
すると、この叫びに合わせるように天井からヒョウ (動物じゃない方ね)が降り始め、二人と一匹?一羽?一体?を容赦なく襲った。
「強制排出ボタンを!!」と、コントロールパネルの足をつかみながら博士が叫び、
「どのボタンですか?!」と、床に打ち付けのトムソン椅子 (ググれ!)に必死で喰らい付きながら赤い髪の女性は訊き返した。
「Mr.Bの前にある赤いボタン!!」
「ドノ赤イぼたんダ?!」と、不定形生物。
「コーギーの写真のすぐ横!!」と、博士。
「分かっ…………こーぎーッテナンダ?」
「胴長短足の犬がいるでしょ!!」
すると、どうにか問題の犬の写真を見付けたのだろう件の不定形生物は、「ア、コレダナ」と言って、ポチッと赤いボタンを押した。
と同時に。
ボックスの出口扉がパカッと開き、
カクッと全体の向きを90度変えたかと想うと、
「それはノフォーク・テリア!!」と、叫ぶ博士を“強制排出”させていった。
(続く)