第二十四週:庭と重ね合わせ(土曜日)
「おーい、樫山さんよー、まだかー?」
えーっと、玄関は大丈夫だったし、お勝手口も大丈夫。二階の窓もチェックしたし……あ、そうそう、ガスの元栓も一応閉めておかないと……って何処だ?
『その位置からですと右手奥の流し台の下にあるかと――』
あ、ありがと……えーっと、あとは……、
「ありゃ一体、何やってんだ?」
『Mr.樫山の先ほどの発言を借りるなら“戸締りと火の元のチェック”と考えられます』
「自分ちでもないの?」
だって、ひょっとしたら長い間留守にすることになるかも知れないでしょ?最後にいたのは僕たちですし――、
「タイムマシンで行くんだろ?“長い間留守”なんてこと起きるハズないじゃないか」
だってこれ、Mrのポッドですよ?
「だから?出た時間に戻れば良いんだろ?」
デュさんだって、このMrの隠居所がずっと留守だからって遊びに来てたんでしょ?
「……あれ?」
僕も理屈はよく分りませんけど、先ずタイムトラベルのルールとして“ピッタリ同じ時間”に戻るのは出来ないそうですよ。
「え?そうなの?でも、それならそれで、一分後とかに戻って来れば良いんだろ?」
ですから、僕もあの人と一緒に旅をするまではそう想ってましたけど、あの人の性格のせいか機械の特性のせいかは分りませんけど、狙った時間にピッタリ行くなんてほぼ無理だったんですよ。
「はあ……なんか俺、急に不安になって来た」
まあ、今回は優秀なコンピューターがサポートしてくれるからあの人の運転よりは大丈夫だと想いますけど――頼って良いよね?
『はい。もちろんご期待には応えたいと想いますが、なにぶん今回は行き先が《地球》ですので、ハッキリとしたお答えは――』
(続く)




