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第二十三週:穴とプラネタリウム(金曜日)

『――ピー、そ、そ、その、その後、こ、ガガ、こ、この、この、ガガガ、し、しん、ブブッ、真空、ブーーッ、真、空、そ、相、て、て、転移により、ジーーーーーーーーーーー、ジジ、真空相転移により生まれた、ズジジジジ、ジジ、ジ、う、生まれた――――ガーーーーー、ピピピッ、生まれた超高温、超高密度のエネルギーの塊が、ビッグバン膨張の開、ピーッ、ワケですが、その時刻は今から約ピー、ピー、ピー、億年前と計算され――』


     *


「おい、君、大丈夫か?」と、青い瞳の男がフラウスに訊き、


「いまのは?」と、彼にしては珍しく怯えた声でフラウスが訊き返した。


「……いったい、何ですか?」


「おい、少年」と、男性。


「“質問に質問で返すな”って習わなかったか?」どうも彼は、その大柄な身体でフラウスの盾となってくれたようであった。


「私は“大丈夫か?”と訊いたんだ」


「す、すみません」


 と、男性が自分を守ってくれていたことに気付きながら、フラウスは返した。


「僕なら大丈夫です――あなたは?」


「なら、良し。私も大丈夫だ」と、男性。「が、そろそろ反重力装置が切れるだろうから気を付けろよ」


 そう言われて彼が下を見ると床までの距離は優に3クラディオンはある。


「じゃあ、早く下へ降りま――」と言い掛けてからフラウスは、奇妙なことに気が付いた。


「気付いたか?」と、男性。


「火の手がありませんね」


「多分、ソニックブレードのデカいヤツだ」


「……騎士の人ですか?」


「……それは分からんが、痕を見るに、やったヤツは地面近くにいる」


「……見えるんですか?」


「いや、見えはしないが…………あの辺りがソニックの出所だろうな」


 そう言って男性は、左の人差し指をプラネタリウムの片隅、ちょうど暗がりになっているところへと向けた。


「気付いたか?」と、ジュースパックの目盛りを確認しながら男性は訊き、


「なにをですか?」と、フラウスは返した。


「なるほど。本当に気付いていないんだな」


「?」


「あそこの暗がり、暗過ぎるだろ?――“抜け穴”が出来ているんだ」


「“抜け穴”?」


 そう訊き返したフラウスの脳裏には、七つの年に遭遇した不思議な出来事と、その時出会った一人の少女の映像がフラッシュバックしたのだが、その想い出を遮るように男性が、


「ま、本当は鏡みたいなもんなんだが……」


 と言ったので、その記憶は再び封印されることになった。


「どうやら狙いは君のようだ――逃げるぞ」



(続く)

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