第二十二週:雨と栗キントン(木曜日)
さて。
何週間か前の連載で、ロクショア・シズカとロン=カイ少年の出会いの場面でも登場した 《タ=ヒ公園》は、クル河のほとり、つまり帝都の南側に位置している。
南北長さ1,000クラディオン、東西長さ200クラディオンの長方形をしたこの公園は、帝都住民のオアシスとして、また映画や小説、亜空間テレビの舞台としても度々登場する西銀河有数の公園の一つである。
そんな園内には多数の彫刻があり、それは古の詩人や英雄、物語の登場人物などをモチーフとしたものがメインなのだが、中には「アルドラの針」――地球で言うところのオベリスクですね――のような彫刻もある。
で、まあ、その中でも特に他を圧するような威容を放つのが、西銀河帝国皇帝ランベルト大帝の銅像なのであった
――――が、どこかのバカが首を落として以降、新しい頭が届くのを目下待っているところだったりする。
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「でも、なんで実際、あんな大きな頭が落ちちゃったんだろ?」と、手元のパンフレット (首あり)と遠くに見える銅像 (首なし)を見比べながらフェテス少年が言い、
「私に言われても知らないわよ」と、シャ=エリシャは答えた。「“かんこうれい”ってのが出されてて誰も何も言えないんだって」
まあ、『帝国所属の騎士の手で落とされました』とは言えないよね。
「それよりもどこか入りましょうよ、寒くなってきたわ」と、エリシャ――そりゃあ雨の中レギュラーダブルで食べればそうなるよね。
「えーっとね」と、パンフレットを眺めながらフェテス少年。「あ、動物園がある!」
「寒いって言ってるじゃない!」
「あ!冬だとスケートリンクもある!!」
「だーかーらー」
「ならさ――」と、ここでやっとフラウスが口を挿んだ。「あそこの博物館にしない?」
(続く)




