第二十二週:雨と栗キントン(水曜日)
「じゃあ二人は、《ブレケレン》って街から来たんだ」
と、メザースピスタチオのアイスを一口齧りながらフラウスは訊いた。
「……それってどこ?」
すると、これに対してフェテス少年は、貰ったばかりのチョップドチョコレートをペロ。と舐めながら、
「《フィクスバク》って惑星の北の方――大体40度ぐらいかな?」
と答えた。
「夏は死ぬほど暑くて冬は死ぬほど寒いんだ、実際――ね、エリシャ?」
すると、
「そうね、“ブレケレンの冬は私に血を流させる”ってぐらい」
と、絶賛オーダー検討中&真剣この上ない顔のまま彼女が言ったので、
「“血を流させる”?」
と、訝し気な顔でフラウスが訊き返した。
そこで、
「パウロ・ガルフルンケルって人の詩だよ」
と、フェテスは付け加えたが、
「シモンね。――パウロ・シモン」
と、すぐさまエリシャに訂正された。
「アンタ、いっつもその二人を混同するんだから」
「そうだっけ?」
「そうよ、何度言っても直らないんだか――よし!決めた!!おねーさーーん。私、この“グレート納言あずきアーモンドファッジ”と“バナナ&ベリー&ベリー&ベリーバニラ栗キントン”のダブルで!!」
すると、お店のお姉さんが、
「スモールですか?レギュラーですか?」と訊いて来たので、
「もちろんレギュラーで!」と、エリシャは答えた。「コーンはワッフルで!!」
*
「どう?」と、アイスクリームショップの裏通りを出ながらフェテスが訊き、
「うーーん?あずきとアーモンドと栗の味が見事に調和」と、エリシャは答えた。
「……していないわね」
(続く)




