第二十一週:紅茶と少女(木曜日)
「ここんとこの先生が腕の立つ人で良かったのお、いつぞやのジイさまみとうのに当たっとったら、あのまま死んどったかも知れんぞ」
「まさか、あそこに貴方がいるとは……」
「わしゃ、お前、アレよ、大帝のお孫さん帝都に連れて行った帰りよ。そしたら王が「数ヶ月行っとってエエぞ、おかげでこっちは静かじゃ」言うてくれたんやがのお、如何せん、ワシャ、ああ云う都は苦手でのお」
「変わっていませんね……」
「そりゃお前、この前会うてから五年か?そない急に変わるもんちゃうわ。確かにお前はエライべっ……まあ、大きゅうなったが……腕はちいと落ちたんじゃなあか?」
「……それは……耳が痛いですね」
「ま、不意を突かれたんかも知れんがのぉ、あなぁな場所で襲って来る方がちょうおかしいっちゃおかしいしのお――心当りは?」
「それが……ないとは想うのですが……」
「やられたとこ――云うても全身じゃが、そのスキャン見せて貰うたが、ありゃ 《ラット》か 《ストラット》じゃ――受けたことは?」
「あ、いえ、話には聞いたことはありましたが、受けたのは今回が初めてですね」
「わしも一度やられたことがあるがのぉ、左腕がしばらく使いもんにならんかったわ。お前らもよう急所を外したのぉ」
「……お前ら?」
「そうよ。微妙過ぎて素人目ぇには分からんかも知れんが、あのボン、ありゃええ筋しとるで、自分から急所を外しに行っとる――ありゃ、お前が教えとんのか?」
「いえ、私は、と云うか、誰も何も」
「そうか、なら天賦の才かも知れんが……ああ、ほいで、あのエライ細けえ撃ち方、心当りが一人おるんじゃが、それがちと奇妙での」
「奇妙?」
「ほうよ。“イグ=バリ”っちゅうヤツやが、そいつこの前死んだんよ」
(続く)




