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第二十週:社と甲冑(木曜日)

 さて。


 《ダイザンギ社》には、各々それだけで西銀河帝国の天然記念物に指定されている大ウブスナグスが二本ある。


 一つは、境内ほぼ中央、神門前に威風堂々とした姿を見せ、伝承樹齢五千三百年と言われる 《イェン・グス》で、これはケン=イェン手植えとの伝承が残るため、この名が付けられている。


 もう一つは、祖霊社裏手、ウブスナグスの森の中に立つ、こちらは樹齢三千年或いは四千年と言われる 《チュモン・グス》で、《イェン・グス》の夫婦樹であるとされている。


 そうして、昨日のこの連載で「先にあそこに行ってるね」と、ロクショア・シズカが指差したウブスナグスは、こちらの 《チュモン・グス》の大木であった。


     *


『すっかり遅くなってしまった』


 と、待ち合せの場所に向いながらロン=カイ少年は想い、そうしてまた、それと同時に、


『いつかは自分も――』


 と、云うようなことをも彼は考えていた。


 そう。


 宝物館の学芸員から聞いた歴史に詠われるような騎士になりたい、なれるかも――と。


 この呪われた血も、いや呪われた血であるからこそ、勇者ブラディオスやパパスグロリのような、老雄ストーレや大エイスアのような、そんな騎士になれるかも知れない。


『そうして、そんな自分の横には、自分と同じ方向を見て立つ、シズカさんに居て欲しい』


 そう少年は、子ども染みた――余りにも子ども染みた妄想を抱きながら、彼女との待ち合せへと向い、


 そうして、そんな子ども染みた妄想はあくまでも子ども染みた妄想でしかないと云うことを想い知らされることになる。


 そう。


 ウブスナグスの森の中ほど、《チュモン・グス》の木の下には、打ち散らかされた彼らの昼食と、口から血を流し倒れる彼女の姿があったのである。



(続く)

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