第二十週:社と甲冑(月曜日)
ロクショア・シズカとロン=カイの二人がトランジットのために立ち寄った 《ショ=ヨウ》はプレパー・ストレイの中程に浮かぶ小さな惑星である。
この惑星の星際宙港は三つあり、彼女らの航宙機が降り立ったのは 《オオザ》と呼ばれる山がちな大島の、その北西岸であった。
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「カイ君さ、君、甲冑とかに興味ある?」と、ロクショア・シズカが訊き、ロン=カイは、
『?』と云う感じに首を傾げた。
「ここの宙港って狭くてさ、半日も時間潰せるようなとこじゃないのよ」
『……?』
「ここからちょっと行ったとこにさ、《ダイザンギ》って昔からのお社があってね、昔の鎧とか兜とか一杯置いてあんのよね」
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《ダイザンギ社》の創建は余りにも古く西銀河の神話時代にまで遡らなければならないが、元々はオオザ島の代表的な三山 (ガトウ・アンジン・サク)を祀った社であり、その後、海の神、山の神、そして特に戦の神として歴代の王朝・帝国・各地の豪族・騎士などから尊崇を集めることになった――そうである。
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「それで、うちの陛下の家もそうだけどさ、イン=ビト王の所とか、色んな宙域の王族やら騎士さんやらが武運長久祈願に武具を奉納しまくったもんだから、帝国指定の国宝とか重文とかの古い甲冑がゴロゴロしてんのよ」
と、《ダイザンギ社》行きのバスに乗り込みながらシズカは言った。
「私の師匠がそーゆーの好きな人でさ、小さい頃に何度か連れて行って貰ったんだけど……」
と、ここで彼女は少し言葉を切ると、
「ま、そーゆーのに興味なくてもさ、直ぐ横にウブスナグスの森もあるし、そこでお昼でも食べましょ?」
と言って笑った。
(続く)




