第二週:コーギーとテリア(月曜日)
さて。
かつて存在した……失礼、つい先日復活した辺境惑星 《地球》に且つて存在したある大詩人は、ある時ある場所ある友人に次のようなことを語ったそうである。
「今日の歴史家は誰も彼も、『ローマの英雄などと云うものは存在しなかった。あれらはみんな作り話だ』と云うようなことを言ってはしたり顔をしている。恐らくそうだろう。本当のことだろう。だが、たとえそれが本当だとして、そんな詰まらぬことを言って一体彼らは何をしたいのだろうか?それよりも何よりも、ああ云う立派な作り話を、あれをそのまま信じられるほどに、我々も立派であるべきではないのだろうか?」
なるほど。
筆者はこの『ローマの英雄たち』の物語を残念ながら浅学のため知らないが、ここでこの大詩人が言わんとしていることは実に簡潔明瞭、当たり前にも当たり前過ぎることであるように想う。と云うか、あまりにも健全過ぎて、我々のような精神の病人には、一種の滑稽味すら感じさせるぐらいである。
*
「――それからエルはどうなったの?」と、ベッドの中から幼き日のフラウス・プラキディウス・ランベルトが尋ねた。
するとこの問いに彼の祖母――母方の祖母は、「エルがさっき河の水を飲むことを禁じられたのは憶えてる?」と、逆に彼に尋ねた。
すると、この問いにフラウスが無言で頷いたので、
「彼は、ほかの人たちがまるで流星の様に彼方此方へと飛んで行くのを見送った後、また彼らと同じように泥のような眠りに落ちたの」と、祖母は続けた。
「――そうして不意に目を開けると、そこはまだ真夜中で、彼は、次の日の朝に自分が火葬されるための薪の上に横たわっていることに気付いたの」
「それ、本当のお話?」と、フラウスが訊き、
「全てのお話は、全て本当にあったことなの」と、祖母は答えた。「――おやすみなさい」
(続く)