第十九週:大魚と星の海(火曜日)
惑星 《ラケダ》のルーアン=リアス王が従兄からの招きを承諾した丁度一週間後、その酒宴は催された。
が、もちろん、昨日書いたような事情もあり、王の警備・警護には万全が期されることになった。
王宮からオーレス邸に向う沿道には警戒の兵士がチチウカネチビアリの子一匹通さぬよう並べられ、オーレス邸の門戸階段に居並ぶ者も皆ルーアン王の親戚腹心で、宴席では全員が長柄の剣を手に王を挟んで侍っていた。
『ここまで警戒しておけば、流石のオーレスも手出しは出来まい』
と、王の側近・宦官らは考えていたようである。
*
「覚えておられますかな、王?子どもの頃、王が釣り上げられた見事なニールパーチを」
と、酒宴たけなわなころ、真っ赤な顔のオーレス=リアスが言った。
すると、
「もちろん。忘れるハズがありません」
と、こちらも酒ですっかり赤くなった王が応えた。
「あの時、貴兄が居られなければ、私はヤツに引きずり込まされていたでしょう」
「六分……いや四分の一クラディオンはありましたか? アレを丸ごと焼いて皆で食べた」
「あの時、貴兄と食べたパーチの味……いやいや、忘れられるものではありません」
「さあ、そこでです、王よ」
と、オーレスは言い、料理人に本日の主菜を持って来させるようにと近侍の者に伝えた。
そうして、それから暫く後に運ばれて来たのが、四分の一クラディオンはあろうニールパーチの姿焼きであった。
「兄上!」
と、想わず王は声を上げ、
「領内の釣り人が持って来ましてな」
と、オーレス=リアスは笑って応えた。
「是非、王と共に食したいと、今日の宴にしたのです」
と、この言葉に王は涙を流さんばかりであったが、
と同時に、
問題の魚を運ぶ料理人の額には何故か大粒の汗が浮かんでもいた。
(続く)




