表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/331

第十九週:大魚と星の海(火曜日)

 惑星 《ラケダ》のルーアン=リアス王が従兄からの招きを承諾した丁度一週間後、その酒宴は催された。


 が、もちろん、昨日書いたような事情もあり、王の警備・警護には万全が期されることになった。


 王宮からオーレス邸に向う沿道には警戒の兵士がチチウカネチビアリの子一匹通さぬよう並べられ、オーレス邸の門戸階段に居並ぶ者も皆ルーアン王の親戚腹心で、宴席では全員が長柄の剣を手に王を挟んで侍っていた。


『ここまで警戒しておけば、流石のオーレスも手出しは出来まい』


 と、王の側近・宦官らは考えていたようである。


     *


「覚えておられますかな、王?子どもの頃、王が釣り上げられた見事なニールパーチを」


 と、酒宴たけなわなころ、真っ赤な顔のオーレス=リアスが言った。


 すると、


「もちろん。忘れるハズがありません」


 と、こちらも酒ですっかり赤くなった王が応えた。


「あの時、貴兄が居られなければ、私はヤツに引きずり込まされていたでしょう」


「六分……いや四分の一クラディオンはありましたか? アレを丸ごと焼いて皆で食べた」


「あの時、貴兄と食べたパーチの味……いやいや、忘れられるものではありません」


「さあ、そこでです、王よ」


 と、オーレスは言い、料理人に本日の主菜を持って来させるようにと近侍の者に伝えた。


 そうして、それから暫く後に運ばれて来たのが、四分の一クラディオンはあろうニールパーチの姿焼きであった。


「兄上!」


 と、想わず王は声を上げ、


「領内の釣り人が持って来ましてな」


 と、オーレス=リアスは笑って応えた。


「是非、王と共に食したいと、今日の宴にしたのです」


 と、この言葉に王は涙を流さんばかりであったが、


 と同時に、


 問題の魚を運ぶ料理人の額には何故か大粒の汗が浮かんでもいた。



(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ