第十九週:大魚と星の海(月曜日)
さて。
ロクショア・シズカとロン=カイが 《ウー=シュウ》行きの宇宙船に搭乗した丁度その六週間前、西銀河北西域に位置する惑星 《ラケダ》の公子オーレス=リアスは、従弟であり当時のラケダ王であったルーハン=リアスを自邸の酒宴へ招待していた。
この招きに対してルーハン王は、些か想う所もあった様だが、かつての幼少年期「ルーハン、ルーハン」と親しく接してくれた従兄の顔を想い出すと、臣下に気取られぬ程度に微笑んでから、これに応ずることとした。
がしかし、この王の決断に対し反対の意を表したのが当の側近・宦官らである。
と云うのも、詳しい事情はまた別の機会に譲る事とし割愛するが、ルーハンが父である先王より位を継いだ際、オーレスの派閥より次のような異議申し立てがあったからである。
『兄弟の順序で云うのなら、ルーハン様オーレス様の叔父上であり先代の弟君でもあられるバークアン様が王になられるのが筋。 また、子の順序で云うのなら、先々代のご子息であられるオーレス様が王になられるのが筋』
そうして、問題のバークアン=リアスは王位継承を嫌い諸方放浪の身の上
――つまり、オーレス様が王となるべきである、と。
なるほど、確かに。
王位にしろ帝位にしろその継承に関しては各土地・各時代において各人・各派閥が「あーでもない、こーでもない」と好き勝手適当な理由を付けては自分たちの利益を上げようとばかりしているので (女系はNGとか)、ついつい『筋とか道理とか、どーせ関係ないんでしょ?』と言いたくなってしまうが、この二人に関して言えば、年齢・続柄・国民の評判等から考えても、継承順位を間違えた――と言ってもおかしくないケースではあった。
*
「それでも構わん」と、ルーハン王は言った。「私も久々に従兄上の顔を見てみたい」
(続く)




