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第十八週:天使と良き兆し(水曜日)

 カチャ。


 と、少年の手首に巻かれたバンドを外す音がして、


「宮殿の爺さま連中はうるさく言ってたけどさ」


 と、ロクショア・シズカが言った。


「やっぱり嫌いなんだよね、こう云うの、私は」


 いま彼女が外したそのバンドは、彼女の左胸に埋め込まれたチップ――皇帝配下の騎士となった際に埋め込まれた騎士の個人識別用チップと連動しており、彼女から300m以上離れるとバンドに仕込まれている小型フェイズシフターが作動、バンドの周囲30cmのあらゆる炭素型生物の分子構造を破壊するようセットされていた。


「だから、私的には、君を信用して外すんだからさ」


 と、問題のバンドを自身の胸の内ポケットにしまいながらシズカは続けた。


「――逃げ出したりしないでよね」


 ここは帝都郊外にある 《ク=アン星際宙港》の入り口。旅装姿の二人は年の離れた姉弟、或いは母子のようにも見える。


「立ち止まらないで下さーい」


 と、遠くで叫ぶ宙港警備員の声が聞こえ、出発ロビーに向う人の波の向うには青く青い空が見え、まるで彼らの旅路を祝福しているようであった。


「“信用”って分かる?」


 と、シズカは訊いたが、少年に何かを応える様子はない。


 そこで彼女は続けて、


「分ってたら首を縦に振って」


 と、自ら首を縦に振りつつ言い、


「分らなかったら、逆に首を横に振って」


 と、これまた自ら首を横に振りつつ言った。


 すると少年は、そんな彼女のおどけた姿に少しだけ口元を緩ませると、その小さな首を縦方向にゆっくりと振った。


「そう。なら、右手を出して」


 と、その白く美しい右手を自分から出しながらシズカが言うと、


 少年も、震えつつだが、それに応えた。


「大丈夫、何も問題はないわ」


 と、微笑みを見せながらシズカ。


「旅を楽しみましょう」



(続く)

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