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第十八週:天使と良き兆し(火曜日)

『――ならばそのまま彼女と埋葬されるが良い!私も一緒だ!!』


 と、4D映像の中でイケメン王子が叫び、


「ああん、やっぱりカッコ良いですよねーー」


 と、生埋め (正確には“仮死埋め”)から生還した格好のままストーン女史は見悶えた。


 すると、この様子を傍から見ていた博士が、


「何がそんなに良いのか分りませんけどね」


 と言い、これに続けて、


「さっさトソノ泥ダラケノ服ヲ着替エテクレ――縁起ノ悪イ」


 と、Mr.Bが言ったので、


「えー、もー、なーんでこの良さが分らないかなあーー」


 と、彼女は返したが、


「テレビドラマならまだしも」


「現実ダカラ笑エモシナイヨ」


 と、逆に二人から冷静なツッコミを入れられ、更には、


「と云うか、テレビドラマだったとしても」


「コンナ長々ト喋ラレタラこっち疲レルヨ」


 と、某有名劇作家が聞いたらプライドをバサバサ傷付けられてそのまま田舎に引っ込んでしまうようなセリフさえも聞かされることになる


 ――のだが、まあ、そんな彼らの暴言はさておき、イケメン王子のセリフは続く。


『――私はずっとお前の友だった。しかしそれはもういい……さあヘラクレスよ、したいようにするが良い。それでも猫はニャーと鳴き、犬はワンと鳴くだろう。』


「いま“猫ハにゃー”ッテ言ッタカ?」


 と、笑いを抑えながらMr.Bが言ったので、


「うるさいわねえ」と、ふくれっ面でストーン女史は返した。


「静かに鑑賞しなさいよ」


     *


 さて。


 と、まあ、そんなこんなで。


 この後、このイケメン王子も、その母も、その叔父 (この時は義理の父)も、ヘラクレスならぬその元友人も、“手はずの狂った悪だくみ”によってその命を落とすことになる。


 なるのだが、タイムパトロールの調査結果によると、この痛ましい惨劇で助けられる命は――助けても歴史に影響を与えない人物は――先述の「小川に落ちて溺死した女性」ただ一名の命だけであった。


 で、まあ、その後、この問題の女性は、TP本部医療棟での入院加療の甲斐もあり、何とか心身ともに健康体へと戻り、戻ったどころか、そこの医師・看護師たちの働きぶりに強い感銘を受けたのか、そのまま医療・看護の道へと進むことになり、TP内部では『医療棟の天使』と歌われるまでになるのだが


 …………まあ、これもまた別のお話ですね。


     *


「明日は聖なるバレンタイン~♪」


 と、TP本部の屋上で問題の女性は歌った。


「朝のまだきに あなたの窓辺で 子どもの私は待っ……」


 空は何処までも青く澄み渡っていたが、それでも彼女は、それ以上を歌うことが、どうしても出来なかった。



(続く)

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