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第十六週:ボロキレとブラウス(金曜日)

 さて。


 第一部の《ハドルツ攻防戦》でもお見せしたイン=ビト王の必殺技 《最大剋星龍捲風 (ビッグバン・セオリー)》は、そのコメディーチックな異名の是非はさておき、大変に習得の難しい技の一つとして騎士の間では知られており、実際の所、この時点 (星団歴4239年)でこの技を習得出来た者は――その威力の大小をさておいても良いのならだが――イン=ビト王を含めても十名いるかいないか……と云ったところであった。


 では、


 何故それ程までにこの技の習得に困難が伴ったのかと云うと、先ずはこれを習得しようとする騎士本人がその心と技と体のすべてにおいて健全そのものであり続けなければならなかったのに加え、この技の開発者であり実践者であるイン=ビト王が、


「正直、どうやって説明すればエエのか分からん」


 と云う昔ながらの頑固で偏屈な職人のようなことしか言わなかったのが大きいであろう。


 であるからして、


 この技をどうにかこうにか自分の物・自分達の物にしたいと考えた各国・各惑星の騎士・騎士団連中は、無理を言ってはイン=ビト王にその練習風景を撮らせて貰ったり、大金払って講習会を開いて貰ったりしたが、それでも習得出来る者は限りなくゼロに近く、辛うじて


「あ、なんかそれっぽいの出ました!」と言う騎士が極まれに出て来る程度であった。「あ、でも、どうやって出したかはよく分かんないっスけど」


 で、まあ、


 この「なんかそれっぽい」技にも名前を付けなくてはならなかったワケだが、流石にパチモンの技に本家の名前を冠するワケにもいかず、そんなこんなでこの技は、誰からともなく、《最小剋星龍捲風 (クースラポリの義憤)》と、本家への畏敬と敬意とを込めて呼ばれるようになったのである。


     *


「それで……その、グース?ナントカとは何者ですか?」と、中年の警士が訊き、


「あ、“クース”ね、“クースラポリ”」と、ロクショア・シズカは答えた。「大昔の素粒子物理学者らしいけど、ほら、わたし文系だからさ、詳しいことは分からないのよ」


「はあ……で、まあ、その技を使って被疑者を捕まえようとしたんですね」


「うーーん、ま、そうだね。もちろん、他の技との組み合わせでだけど」


「ああ、はい」と、手にした古式ゆかしき紙のメモ帳にメモを取りつつ中年の警士は続けた。「で、その“クースなんとか”が、河向うの陛下の銅像に当たって、その首を落としてしまった…………で、合ってます?」


 そう言って警士は河の向うに目を遣ったが、なるほど、そこに見えるのは巨大なランベルト大帝 (首無し)の銅像であった。


「あー、ね、近過ぎるとは想ったんだけどねーー」と、ブラウスの袖をめくったり戻したりしながらシズカ。「やっぱ、怒られるかなあ?」


 ――ブラウスもボロボロだよ。



(続く)

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