第一週:白い袖と金色の冠(金曜日)
『白い袖が翻り、金色の冠が煌めき、巫女ルリュイセスは、未だ目の前を舞っているようである……』
と、劇の翌日、友人に宛てた手紙の中でコンスタンティウスは書いている。
『あれは一体何だったのだろうか?あれを一体何んと名付けたらよいのだろうか?メルトスの鼓に合わせツッツッと動き出したあの二つの真っ白な足袋を……』
そうして、この手紙からちょうど二年と三ヶ月後、コンスタンティウスはこの少女を第三夫人として招き入れるよう一世大帝を説得している。
――コンスタンティウス十九才、ファウスティナ十四才の春の日のことである。
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「なぜ、あのようなリバシデの娘などを――」と、もちろん、この縁組には各方面から非難も批難もあったようだが、何故かこの件に関して一世大帝は無言を押し通している
――が、ただ、ある時、何かの折に、「これは女子供に分かることではなかろう」と、近侍の宦官に漏らしたとの巷説は存在するようである。
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さて。
この一世大帝の言を補強するワケでもないが、皇室本紀に面白い記述を見付けたので、参考までに引いておこう。
それはフラウス三才の折り、ファウスティナが休暇を貰い生家へ戻った時のことである。
ある日、ファウスティナが実家の敷地で草刈りをしていると、一人の老父が通り掛かり水を一杯所望した。そこで彼女は「私たちも丁度食事にするところでした」と言って、老父に無酵母のパンと葡萄酒を一杯分け与えた。
すると、食事を済ませた老父は、改めて彼女の顔を見て、「あなたには貴相がある」と言い、ついで彼女の膝の上で眠るフラウスを見て、「あなたの貴相は…………この男の子から来ているものでしょう」と、言ったと云うことである。
(続く)