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55.鬼の首を取ったなら ⑥

 二振りの巨大な剣を軽々と振るう武将鬼。トラヒコの風の斬撃を一振りで相殺すると、もう一振りでトラヒコを叩き斬ろうと振り下ろす。それを躱しながら風を纏った刀で武将鬼の足首を、腕の筋を、手首を、喉を、斬りつけるトラヒコであるが、武将鬼の固い皮膚に弾かれてしまう。

 刀を鞘におさめ、「居合 疾風」をトラヒコが放つと、武将鬼は二振りを同時に風の一文字へ叩きつけ、斬り裂いてしまった。その時にできた隙を狙ってさらに風の斬撃をトラヒコが飛ばすものの、大剣を持った両腕を広げコマのように回転をする武将鬼に弾き飛ばされてしまう。回転を止めた武将鬼の目の前には、再度居合の構えを取ったトラヒコが見えた。先程の居合よりも、魔力が込められている。武将鬼は不敵な笑みを浮かべ、迎え撃つ構えを取った。

「居合 疾風怒濤」

先程とは比べ物にならない程の風の魔力が、太い一文字の斬撃となり、武将鬼へ向かう。武将鬼は、両腕を交差させると、前方へ二振りの大剣を振り抜いた。大剣の切っ先が交わったのと、風の一文字がそこにぶつかるのが同時であったが、武将鬼はそのまま迎え撃ち、一文字はやはり斬り裂かれた。呼吸が乱れるトラヒコ。武将鬼もやや息を弾ませるが、すぐに整う。そして、口を開いた。

「風の斬撃、弱い。風を纏った攻撃、まだ弱い。居合、2回目は惜しいが、それでも強いとは言い難い。つまり、お前、弱い」

武将鬼の言葉に、トラヒコは鼻で笑う。

「まだまだ。武器で受け止めるってことは、少なくとも居合の技はまともに食らえば痛いってことだろう。当ててやるよ、まずは」

トラヒコが居合の構えを取ろうとしたその時。

「参る」

今度は武将鬼が、トラヒコへ間合いを詰め、二振りの大剣で斬りつける。交互に振るったかと思えば、突然二振り同時に薙ぎ払い、流れが掴みにくい。トラヒコは足捌き、跳躍、さらに縦横無尽に駆け回り攻撃を躱すが、次第に追い詰められて刀で受け止めた。凄まじい衝撃に、トラヒコが弾き飛ばされる。追撃を、今度は風の魔力を纏って受け止めるトラヒコ。風圧でなんとか相殺しようとするが、じりじりと押され、そのまま押し切られてしまう。岩壁に叩きつけらそうなところを、なんとか刀を持ったまま回転し、竹トンボのようにゆっくりと着地した。その発想を応用し、今度は岩壁を駆け上がり、刀を正面に振る勢いのまま前方へ回転して武将鬼へ向かって飛び出すトラヒコ。風の斬撃が、風車のように、一回転ごとに大きくなっていく。武将鬼が二振りの大剣で受け止めるが、この立ち合いで初めてトラヒコの攻撃で武将鬼が後退した。しかし、咆哮を上げた武将鬼が大剣を振り抜くと、風車の斬撃も斬り裂かれてしまう。もう1度、とトラヒコが岩壁へ向かうが、武将鬼もそうはさせぬとばかりに反応し、岩壁を背に立ち塞がれてしまう。

 壁を背にした武将鬼を前に、トラヒコの脳裏には、カエデの揶揄うような声が過った。

「今はまだ、『そよ風』といったところだね」


 トラヒコが、刀を鞘におさめる。しかし、居合の構えのように腰を落としたりはしない。まるで、立ち合いを放棄したかのように、鞘からも手を放している。武将鬼も首を傾げるが、トラヒコの表情を見て、まだ勝負を諦めたわけではないのだと察知する。

 トラヒコは両足を肩幅に広げ、足の指で地面を掴むようにして立つ。息を吐き切ると、周囲の風の流れや、温度や、柔らかさを感じ取りつつ吸い込む。そして、あの日丘の上で初めてカエデと立ち合った時に、カエデがしたのと同じように、左腰のあたりをさっと払う。風が、トラヒコの周りを吹き抜けては戻り、やがてトラヒコの刀へと収束していく。そして、ゆっくりとトラヒコが刀を抜いた。刀は、風の魔力で、黄緑色に輝いている。さらに、鞘から刀身が現れてゆくにつれ、轟々と風が吹きすさぶ。武将鬼は、ただならぬ気配を感じ取り思わず後退し、背後の岩壁に背がついた。

「いくぞ」

トラヒコは呟くと、刀を振りかぶり、正面へ真っ直ぐに振り下ろした。轟音と共に凄まじい勢いの風が武将鬼を襲い、岩壁へ押さえつけ、そして岩壁に大穴をあけた。武将鬼は外へと吹き飛ばされ、城の外へと落下していった。

 「がはっ」

咳き込むトラヒコ。地面に膝をつくが、その地面はひどく冷たい。なんとか立ち上がり、穴の向こうの様子を確認するために歩くと、地面は反対に熱くなっていった。

 トラヒコが大穴の向こうを見下ろすと、ごつごつとした岩の斜面に叩きつけられ、血だまりのなか、ぴくりとも動かない武将鬼の姿があった。恐るおそるそれを取り囲んだ兵士たちが、銃を撃ち、剣で首を斬りつけても、やはり動かない。絶命しているようだ。


 「これでも、『そよ風』かよ・・・」

岩の長机の残骸に腰掛けると、トラヒコは他の2つの戦いのことを思った。

「俺は勝ったぞ。お前らも・・・」


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