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35.C級冒険者試験①

 雪が解けだす頃。ギルドの広間、ライム、トラヒコ、ユウヒ、ネガが座るいつもの場所に、モカが笑顔の小走りで書類を持って現れた。

「皆さん、書類試験、通過です!」

途端に、拍手と喝采が起きる。ルンポが、「まずはよかった、本試験に進んだだけでも大したもんだ」とやってきて、ライムの肩をバンバン叩いた。ひとまずの安心と、嬉しさと、いやいやここからが本番だという思いとで、ライムはとりあえず周りの拍手にお辞儀で返した。ユウヒはもっと愛想よく、ルンポとハイタッチした後、ギルド中の祝福に応えている。ネガは、ライムの心境に近いだろう、ぼーっと固まって、鳥の巣頭をゆっくりと掻く。トラヒコは、呆れたようにため息をつく。トラヒコの気持ちも、ライムは分かる。これから、ここから、なんだ。


 ライムたちは冬の間、本拾いに勤しみ、いくつかのDランクの冒険譚を完結させ、未完の冒険譚から出現したDランク程度の魔物を討伐してまわった。その合間に訓練や勉強も怠らなかった。スミの件があってから、自分たちが強くなることで未来の選択肢が広がることを実感したのである。とはいえ、雪合戦をしたり、ライオンタウンの冬祭りにギルド総出で参加してケーキを山程食べたり、年越しは酔っ払いのルンポたちに絡まれてやっとの思いで寮に帰り4人で日の出を見たりと、楽しみも忘れてはいなかった。

 そして年が明けた頃、モカから「そろそろ皆さんにお伝えしておこうと思うのですが」とギルドの受付へ呼び出された。

「皆さん、取り置きのCランクの冒険譚についてですが・・・そろそろ完結を目指してみませんか?」

オロチ山での赤鬼と戦った記憶が蘇る。

「Cランクの冒険譚に挑むには、当然、C級冒険者であることが推奨されます。そして、C級からはギルドマスターの判断だけではなることが出来ません」

顔を見合わせるライム、ユウヒ、ネガ。トラヒコが腕組みをして答える。

「C級冒険者試験、ですよね。俺、申し込みます」

やっとお声が掛かったか、と言いたげに迷いのないトラヒコ。そして、3人に向かって「お前ら、自信がなかったら受けなくてもいいぞ、あの本は俺が完結させておいてやる」と鼻で笑う。

「あんたねえ!うちだって、あの時とは比べ物にならないくらい強くなってるんだから!受けるわよ、当然」

ユウヒがすぐに噛み付く。

「僕も、挑戦したいです。どうすればいいですか?」

ライムも、心臓が高鳴るのを感じ、モカに真剣な顔で尋ねた。

「お、おいらも、受けるっす。確か、書類試験があるっすよね?一応、調べてたっす」

ネガも、自信はなさげだが、それでも試験を受ける具体的なイメージはしていたようだ。

「やっぱり、皆さんならそうくると思っていました!ネガさんの仰るように、皆さんにはまず、書類試験を受けていただきます。これは、皆さんが冒険者としてこれまでどのような冒険をしてきたのかを書類にまとめて提出するものです。皆さんのギルドでの活躍は全て記録に残っておりまして、これらをわたしが提出させていただきます。皆さんの活躍でしたら問題ないとは思いますが・・・。一応、皆さんの意思を確認させていただきました」

モカも、4人のやる気を前にして、説明にも熱がこもる。ぐっと拳を握り、「皆さんなら大丈夫です!」と4人を鼓舞する。

 次の日には、4人がC級冒険者試験を受けることはギルド中に広まっていた。竜の筆くらいの強豪ギルドになると、C級冒険者など珍しくもないと思ってしまいがちであるが、ニマール国内のギルド全体を見るとC級冒険者はほんの2割程度しかいない。B級、さらにはA級となると、まさに狭き門をくぐり抜けた精鋭だけなのである。そういった事情を理解しているルンポたち、トラヒコが言うところの「万年D級中年冒険者たち」は、既に合格が決まったかのように大騒ぎでライムたちを囃し立てた。

「書類試験でニマール国から通る奴は、だいたいが竜の筆だ。つまり、お前らは竜の筆代表でもあるし、ニマール国の代表でもあるってことだな」

ルンポにそう言われ、ネガは鳥の巣頭を抱えていた。そして。


 試験会場へ向かう日がやってきた。大陸中の、同じくC級冒険者を目指す者たちが集うのである。

「皆さん、いってらっしゃいませ!」

モカがギルドの入口まで見送ってくれる。マスターが隣で、「いってらっしゃい」と穏やかに微笑んでいて、不思議と昂ぶった心が少し落ち着いた。ルンポたちは昨夜、4人の壮行会にかこつけて散々飲み明かしたため、まだ寝ていることだろう。

「ライムさん、頑張って!」

ヨモギが、でんえんの前で手を振ってくれる。せっかく落ち着いた心が、一気に飛び跳ねた。ぎこちなく手を振り返すライム、それをじっと見つめ、「頑張んな」と笑顔をみせるハクビ。

「みなさーん!」

ナガレの愛車の窓から手を振るジャンベ。試験会場の近くまで、ナガレが送ってくれることになっているのだ。

 

 エンジン音と共に、走り出す車。行先は、今回の試験会場である、マクル国である。

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