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11.鬼か蛇か①

 急な斜面を這うようにして登りきると、開けた場所に出た。山の中腹辺りには着いただろうか。

 オロチ山は麓から見るとそれほど高い山には見えず、はじめはハイキング気分であったけれど、いざ登り始めるとまずネガが「もう、そろそろ休憩しないっすか・・・」と弱音を吐き始め、続いてユウヒも「ちょっと、ネガがバテてるから、休もうって」と木にもたれかかり、ライムも頷いた。

「トラヒコ、ジャンベ、少し休憩にしない?」

先を行くトラヒコは振り返ることもせず、「明るいうちに少しでも進まないと、今日中に帰れなくなるぞ」と歩みを止めない。トラヒコと、ため息をつきながらそれに続く3人との間で、ジャンベは自由気ままに登山を楽しんでいる。鳥の声に耳を傾けたり、木の実を齧ったり、風の匂いを嗅いだり。そして、「ボク、先に行って休める場所がないか見てきます!」とトラヒコを追い抜いて、獣のように駆け登っていった。


 しばらくして戻ってきたジャンベの案内で、最後はネガをライムとトラヒコで押し上げるようにして辿り着いた開けた場所は、涼しい風が吹き抜けていて休憩をするにはぴったりであった。倒れこむネガ、その横で「もっと楽なところに落ちてないの、冒険譚って」と、ジーンズに土が付くことも構わず腰を下ろして汗を拭うユウヒ。ライムもそれに倣って座り呼吸を整えながら、水筒をあける。体力に余裕がありそうなのは、トラヒコとジャンベだけである。

「お前らよりジャンベの方が冒険者として優秀なんじゃないか?鑑定士にしておくのはもったいない」

鼻で笑うトラヒコに、「あのね、ジャンベはマスターから直々に、鑑定士って任命されたのよ」と言い返すユウヒ。

「それ、なんだよね。マスターはなんで、ジャンベを鑑定士として竜の筆に迎え入れたんだろう」

ライムはあの、円環の中に「7」と書かれた冒険譚のことも気になっていた。それは、おそらくトラヒコも同じくらい気になっていることなのだろうとも感じていた。

「あの本のことを知るためっていうなら、それこそ鑑定は鑑定士の方にしてもらって、ジャンベは冒険者として完結を目指すこともひとつだと思うんだけど」

「マスターは、ジャンベが鑑定士の才能があるって見抜いたとか?」

立ち上がり、ジーンズの土をパンパンと落としながら、ユウヒも首をひねる。こちらの会話をよそに、やっと体を起こしたネガに水筒を渡したり、木の上で鳴く虫をしげしげと見上げたりしているジャンベを、腕を組み睨むように見つめていたトラヒコが、突然ふっと笑う。

「まあ、マスターが気遣ってくれたのかもな。いきなり現れたあいつが、お前らをあっという間に追い抜いていったら、お前ら悲しむだろうなって」

すかさず反論するユウヒと、煽るトラヒコ、「おいらが言うのもっすけど、そろそろ行くっすか?」と立ち上がるネガ。無邪気な顔で輪に加わるジャンベの背中をみつめていると、ライムにはあの日から抱いていたもう1つの疑問が浮かんでくる。


 マスターはジャンベが竜の筆に来ることを既に分かっていたような雰囲気だった。それに、ジャンベに竜の筆のことを教えたのは、いったい誰なのだろう。


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