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0009愛人じゃ、嫌。

 敬天愛人。

 その言葉がしっくりくるほど、彼は誰にでも優しい。

 愛人という言葉は人を愛する、つまり人を大切にするという意味も持っている。敬天の方はよく知らないが、彼の長所を挙げるとすれば、十人中十人が愛人という単語に納得するだろう。

 だが、短所として愛人を挙げても、十人中十人が納得するだろう。それだけ彼は優しすぎるのだ。


「愛人じゃ、嫌。恋人になって」


 そう言ったのはいつの事だっただろうか。

 それを聞いた彼は、いつもの笑顔で首を振るとこう言った。


「ごめんね。僕は君の恋人だよ。それは間違いのないことだよ。でも、僕は見て見ぬ振りはできないんだよ。ごめんね」


 途中から泣きそうな顔になった彼に、あの時の私は笑って彼を抱きしめてあげた。


「いいよ。謝らなくても」


 その後しばらく胸の中で、まるで泣いたことが無いかのように、不器用に彼は泣き続けた。


*******


 それは、風の噂だった。


 ――彼は、元は暴走族だったんだよ。


 私と彼の関係は、恋人以上、夫婦未満の関係が続いていた。

 そんな最中に聞いた、本当に風の噂と呼べるような、些細な話だった。

 確かに彼は体力もあるし、筋力もある。

 だけど、私は笑っていた。

 もしそれが本当だったとしても、彼は私の恋人だから。


*******


「僕は、昔ね。暴走族のリーダーだったんだ」


 そう言った彼の瞳は、何かに脅えているようでもあり、反対に昔の夢を思い浮かべて懐かしんでいるようでもあった。


「この手で、人を殺してしまったんだよ」


 私は、彼がごめんねという前に、不器用に泣き出した彼を抱きしめてあげた。

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