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0087少しだけ休ませて 明日から頑張るから

 ――ここは?


 ソレは暗闇の中で首をかしげた。

 崩壊した未来文明の残骸。それが、私の第一印象だった。

 剥き出しのコンクリートや中途半端に割れたガラス、長い間使われてこなかったはずにもかかわらず妙な生活感の残る建物に、洗練された形の動かない機械たち。

 どこか懐かしい気もしたが、それ以上に不気味さを漂わせた廃墟郡だった。

 ソレが空気を振動させる。意味のない音は、なにも伝えてこない。


 ――アナタは?


 そう聞くと、ソレは嬉しそうにしながらどこかへ行ってしまった。

 淡白なモノだ。


*******


 風のない晴天の空から音がする。

 ちょっと時代遅れの洗濯機が動いているような、スムーズな、しかし不安定な音だ。

 少し歩くと発信源は直ぐに見付かった。それは、エスカレーターだった。

 人もいないのに只管に動き続けている真っ黒なエスカレーター。数メートルの高さの所まで続いているらしい。その先には青空が見えた。

 周りには動くものが一つもない。私とエスカレーター、それとソレだけだった。

 好奇心に押され、エスカレーターに乗る。カタカタと音をたてながら私は持ち上げられていく。

 と、突然、恐怖が全身を駆け抜けていった。えたいのしれない、何か見てはいけないモノがこの先にはある。そう直感した。

 慌てたが、しかしエスカレーターは私に考える時間を与えてはくれなかった。


 ――あ……ぁぁっ!


 死ぬんだな。そう、私は理解した。

 ソレは人だった。

 黒と白の、モノクロ写真を切り出したかのような、日常の一コマ。そんな人が視界一杯にあった。

 携帯をいじっている人、何かに座っている人、怒鳴っている人、欠伸をしている人。どれもがモノクロ写真のようにそこにある。

 そこまで認識して、そして私は――


*******


「おはよー」

「おはよ、何か今日はやけに元気ね。いい人でも見付かった?」

「ち、違うよー。私には」

「好きな人がいるもんね~」

「ちょっと! そんなんじゃ」

「冗談だって。で、何があったの?」

「もう。よく分かんない。けど、何か頑張れそうな気がする」

「そっか、頑張れっ」

「うん」

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