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0061ずっと傍にいてね 離れたくないんだ

 金のガチョウといっただろうか。

 とある少年がそのガチョウに触れると離れなくなり、さらにその少年に様々な人がくっついて大変な事になる、という童話だ。

 細かい設定とかは忘れてしまったが――


 コケコッコー


 ――今の状態を端的に表しているだろう。


*******


 事の始まりは登校中だった。

 俺は住宅街の中心、車が一台通れる程の細めの道路を走っていてな。

 寝坊、そして妹が中々起きなかったせいで、こうやって普段なら通らないであろう場所を行く事になっていたんよ。

 妹は関係ないって?

 …………。

 確かに、関係ない。


 でだ。

 とある交差点に差し掛かった時だった。

 俺は見てしまった訳だ。うん。

 そう、ひよこがヨチヨチと道を渡っている姿を。


 まあ普通なら素通りするわな。俺もそうした。

 だがな、何と無く振り返ってみると、そのひよこが凄まじい速さで俺を追い掛けてくるんよ。

 そりゃあもう言葉では表現できないくらい凄かったぞ。


 でな、学校に着いて、流石にもう追ってこないだろうと思って振り返ると、案の定いなかったわけよ。

 この時の嬉しかったのなんのって、偶然近くを通りかかった生徒の肩を叩いちまった。

 するとどうしたことか手が離れなくなった。あの時は本当に焦ったな。

 で、背中に違和感を感じてその生徒に聞いてみた。

 そしたらひよこがくっついているって言うだろ。

 冗談かと思ったぜ。


*******


 ずっと傍にいてね。離れたくないんだ。


 そう、僕は言った。

 本当に何気無くとある有精卵に語りかけた事があった。

 いつの間にか卵は消えていて、少し寂しかったけど、自由研究の題材を新しく探し出さないといけなかったからすぐに忘れてしまっていた。


『遂に彼の背中にくっついた鶏が卵を産み落としました。科学的にも貴重な資料となるだろう卵を、研究員の方でしょうか、慎重にケースにしまいこみます。この卵によって彼らに平穏な日常が戻ってくることを願って止みません』


 少し興奮気味のアナウンサーの声に、まさかな、と頭を振った。

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