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0016Rabbi

「どうぞ」


 扉を叩く音に目覚めさせられ、不機嫌そうな老人がそう言った。


「ラビ殿にお話があって参りました」


 入ってきた青年はそう言ったが、ラビと呼ばれた老人は一層不機嫌になった。


「他にどんな用事があるのじゃ。儂を殺すか?」

「いえいえ、滅相もございません」

「ふん。まあよい。どんな用事じゃ」

「はい。これを」


 青年は懐から一通の手紙を差し出した。

 それを受け取ったラビは一瞬で目を通すと、一つ溜め息を吐いた。


「儂の弟子を頼れと申すに」

「ですが王はラビ殿を、と」

「仕方がないかの。久し振りにあやつの顔でも見るとするか」


*******


「ラビ、久し振りだな」

「王もご機嫌麗しゅう」

「ラビ、かしこまらんでよい。いつもの様にせい」

「ならば甘える事に致すぞ」


 王とラビの間には、一つの将棋盤が置いてある。


「今日は将棋で儂と勝負したい、と申しておったの」

「ラビ、その通りよ。余と手合わせを願えぬか」

「ふむ。儂は構わんが、そちは構わぬのか」

「なに。高が将棋。いかにラビといえど、そう容易くは勝たれまい」


 ラビは一つ唸った。


「そうかもしれんが、そうで無いかもしれんの。それでもよいのか」

「ラビ、構わぬと申しておろう」

「そうか。儂は勝負をしようとしておらんそちとは、手合わせなど出来ん」


 そう言って、ラビは城を出ていった。


*******


 翌日。

 ラビは昨日の様に王と対面している。


「二日も連続で儂を城に登らせるとは、そちは何を考えておるのじゃ」

「ラビ、今日は真剣に余と勝負せい。余はラビに勝つつもりよ」


 ふむ、と考え込むラビ。


「では、儂が勝ったらどうするのじゃ」

「どうする、とは?」

「儂はそちが勝ったら、手持ちの書物を全てそちにやろうではないか」

「なんと」


 王は考え込んだが、ラビの欲しそうな物の見当がつかない。


「ラビ、ラビは何が欲しい」

「この国を」


 部屋の隅に控えていた宰相が慌てて立ち上がるも、王はそれを目で制した。


「ラビ、そこのラビの弟子とまず手合わせしようではないか。余は二回、ラビは一回の勝負。構わんな」

「うむ」


*******


「ラビ、余はラビの弟子に勝っただけで満足よ」

「賭けは」

「そんなもの、忘れたわ」


 そう言って、二人は笑った。

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