0015今日も世界は進んでいく
空中都市。
ここに住む種族は定住を好まない。
そのために、空中に浮かぶいくつもの大陸を渡り歩いてきた。
そして今日、都市を捨てて、新しい大陸に移動する。
「皆、準備はよろしいかな?」
白髪に白髭。それらは伸びきり、地面に着かんとしている。
彼は空中都市の、いや正確にはこの種族の長だ。
もう何度も繰り返してきたこと。
移りたい人が移り、そうでない人は留まる。
「それでは、行こうか」
二つの大陸が接触している僅かな時間。
その間に、全員の移動を完了させなければならない。
まずは子どもと老人。そして女。それから男が移り、最後に長が移った。
「ではな。新たなる世界で」
「ああ、長も。新たなる世界で」
別々の大陸に足を付けた、長と屈強な男は、短い挨拶をする。
それは、この種族のおまじないの言葉。
新しい世界も、平穏でありますように。
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新しい大陸での生活。
それまでの生活が一変するが、それも最初の数週間のみだ。
落ち着けばまたいつもの生活が戻ってきて、そして別の大陸が近付いてきたら移動をする。
そんな生活。
時々そこに以前から住んでいた住民と一緒になる事がある。そこで、子孫を繁栄させる。
ずっと旅を続け、様々な世界を見、そしてそれを伝える。それが彼らの日常。
どこかで彼らは世界を移動する。
そうやって今日も世界は進んでいく。