0014それでも何も変わらない
ん〜、困ってしまった。
目の前の床にはレバーが、壁にはボタンが、天井からはロープが、沢山ある。数えきれないくらいに、だ。
大半が、いやどれか一つを除いた全てがトラップだろう。
これは気を引き締めなければ。
・・・・・・。
よし。それじゃあまずは手近なボタンから。
ポチっとな。
・・・・・・。
何も起きない。
うん。それならそれでいいんだ。次に移ろう。
今度はロープを引っ張る。
・・・・・・。
この場所は静寂に包まれている。
うん。まあ何も出てこないに越したことはない。次だ次。
床にしゃがみ込み、レバーを引く。
・・・・・・。
ガシャン、という音がしたが、これはレバーの音だ。
それ以外は特にこれといったことは起きない。
ま、まあ、運がいいのだろう。前向き前向き。
ロープを引いてみたり、
ボタンを押してみたり、
レバーを引いてみたり。
それでも何も変わらない。
僕はそんな単調作業を続けた。
*******
ほとんどのトラップを処理し終えて、僕は何か違和感を感じた。
それでも、何回も続けてきた単調作業を止めるほどには至らず、手足を動かし続ける。
残り3つ。
残り2つ。
最後はレバーだった。
これで終わりだ。
そう思ってレバーを引いた。
・・・・・・。
なにも起きていないことを確認して、僕はほっと溜息を吐いた。
そこで、ハタと気づいた。
これは単なる時間を消費するための部屋ではないのか、と。
あ〜。無駄なことをしたわけだ。
僕は盛大な溜め息を吐いた。
と。
それと同時に、地響きが始まり、立っていられなくなった。
片膝を付いて片腕で上半身を支える。少し不自然な体勢になるが、姿勢を変えることもできない。
しばらくしてから揺れが収まる。
立ち上がって、手と膝に付いた泥を払うと、目線を中央に向けた。
そこには、このダンジョンのボスがいた。
骨折り損にならなくてよかったな。
そう思いながら、そのボスに剣をもって切りかかっていった。