とぎれぬ口笛
掲載日:2021/04/27
それでも僕は、歩いているよ
口笛を吹いて、秋風に吹かれて
逝きすぎる風景を
とぎれそうな旋律で、なぐさめるのさ
それでも僕は、こらえているよ
灰色の町並みを、家路を急ぐ人波の中
くちびるを尖らせて
こぼれおちないように、曇った空を仰ぐのさ
それでも僕は、口笛を吹いているよ
すれちがう人が、こちらをのぞいても
不安に震える指を、ポケットに突っ込んで
かすかな音色で、隠すのさ
それでも僕は、首を振るよ
「もう、あきらめろ」と言われても
うつむいて、少し洟をすすりながら
「へへっ」って笑うのさ
それでも僕は、微笑んでいるよ
上気した頬の恋人たちが、足早に追い越していっても
楽しそうな笑い声をききながら
銀杏並木をながめるのさ
それでも僕は、歩いていくよ
思い出が肩を抱いて、引きとめようとしても
コートの襟をたてて、
口笛で応えるのさ
逝きすぎる風景を
とぎれそうな旋律で、なぐさめるのさ




