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13.少年兵の最後

しばらく俯いたまま座っていると、グラトニーとトラ師匠が一緒に戻ってきた。何か話しながら来た様だ。


「蜘蛛の映像を解析して回避プロセスの見直しを。強化ヘッドガードは耐衝撃は良いけど視認性をな

んとかしたいわね。返り血で使えたもので無かったわ。あと新型パワードスーツは内圧値を−0.4下げて。あれじゃ1時間は動けないわね」

「了解しました、グラトニー。開発部へフィードバック致します」

「マスター、大丈夫?具合はどう?」


グラトニーが小走りに寄ってくる。シャワーを浴びて来たのかすでに薄い桃色のワンピースに着替えており、ほのかに湿っている髪からは良い匂いがする。普段は可愛らしく感じる仕草も、その手が数分前に人を殺して来たのかと思うと恐ろしく感じる。


俺はグラトニーの問いには答えずに、

「…あの子はどうした?」

「あの子?」

「さっきの少年の事だ」

「あぁ、あの少年兵のことね。捕えたからこれから尋問するよ」

「拷問するのか?」

「拷問?あははっそんな面倒くさい事はしないよ。聞きたい事がある時は自白剤使うしね。っていうか、どうしたの?なんでその子の事を心配するの?」


心配。俺はあの子供の事を心配しているのだろうか?

いや、違う。あの子の行き着く先が俺の終着点の様な気がして怖いのだ。そんな本音を隠して俺は、


「子供の事を心配するのは当然だろ?」

「ふーん。私あの子に殺されちゃったかもしれないんだよ?頭撃たれたり、ナイフ刺されたり。それだけじゃなくてマスターも殺されてたかもしれないよ?それでも?」

「それは…」


俺と話す時はいつも笑顔でいるグラトニーが今は無表情で、まるで俺の心を覗き込む様にしている。俺が答えられずにいると、


「これから尋問しに行くけど、一緒にくる?」

「…あぁ。行く」




「やぁ、少年兵。我が社の特別ルームの居心地はどうかね?といってもここにはその椅子だけしかないがね」


3人でエレベーターに降り、ある部屋に入るとそこは10m四方はあるだろうが中央にパイプ椅子しかなかった。そこに少年は括り付けられている。


「さて、少年兵よ。何か申し送りはあるかね?まぁなにも喋らなくても構わないが」


グラトニーは話す相手によって喋り方を変える。俺と話す時は気のしれた友人と、トラと話す時は上司として。少年と話す時は不遜な態度で話す様だ。

3分程経った時、少年が問いを掛けた。


「…あの病を流行らせた悪魔が居るって、お前が流行らせたって聞いたんだ。本当なのか?」

「それを聞いてどうするんだい?」

「妹があの病気になったんだ。父さんは戦争で死んでしまったし、母さんは変な宗教にハマッてるし。僕が金を稼がないと妹を医者に見せれないんだ。お前を、悪魔を殺したら金をくれるって言われたんだ」

「なるほど、確かに問う資格はありそうだ。答える義務はないけれど、遠路遥々来てなにも手土産を持たせないのは忍びない」


そう言うとグラトニーは瞳を閉じ笑みを称え、胸を張って心臓に手を当てて誇る様に言った。


「そうとも。私があの疫病を流行らせた」

「なっ!」


俺が驚愕で声を上げたがそれ以上に少年の甲高い声が響いた。


「やっぱりお前だったのか!お前のせいで、妹は、家族は!ぐっ!」

少年は思わず立ち上がろうとしたのだろうが、縛られているせいでバランスを崩して頭から転げる。


「おい、大丈夫か!」

俺は慌てて駆け寄り少年を助け起こそうとするが、グラトニーに片手で進路を制された。

そのグラトニーは嘲笑するように、


「おぉ怖い。噛み殺されてしまいそうだ。それにしても君の妹はともかく、家族の崩壊も私のせいにしないでくれよ。まぁ真実を言うと、最初に流行ったあの国の依頼でやったのさ。それがどういう訳か病原菌が突然変異してね。本来は老人を狙い撃ちに殺すウィルスだったんだけど、若者にも感染率が高くなってしまったんだ。おっと、勘違いしないでくれよ?私たちはきちんと言われた手順でやったんだ。それを制御出来なかったのはあの国の責任さ。まぁ君の妹は完全にとばっちりってやつだろうけどね」


息荒く睨みつける少年をニヤニヤしながら見つめるグラトニー。


「さて少年兵よ、未来の話をしようか。我が開発部は是非とも突然変異のプロセスを解明したいと思っているのだが、モルモットの数が足りてなくてね。君の様な若くて健康な肉体を持つ人間は特に足りてないんだ。まぁここまで言ったらわかるだろう」


そう言って背後に振り返り来た道を戻る。


「待て悪魔!」


そう叫ぶ少年をもう一眼もせずに部屋を出てエレベーターに乗り込むグラトニー。

ついて行かない訳にも行かずにトラと一緒に乗り込む。

無言で上がって行く中、俺は静寂を破り聞いた。


「なぁ、グラトニー。お前は一体何者なんだ?」

「そうだねぇ。そろそろマスターには話した方がいいかなぁ。」


右手の人差し指を唇に当て、いつもの考えるポーズで答えるのであった。


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