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【完結】暴虎馮河伝 〜続編あり〜  作者: 知己


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第十一章『桃源郷(四)』

 西王母セイオウボの言葉に拓飛タクヒは驚きを禁じ得なかった。

 

ガクのオッサンが、白虎派……だと……?」

「そうじゃ。十数年前にふらりと出て行って、それきりじゃがな」

 

 拓飛は記憶を辿ってみたが、師父からそんな話は聞いた事がない。それどころか下の名前すら知らなかったのだが。

 

「そなたの仕草や技が、若かりし頃の成虎セイコに瓜二つじゃったものでな。すまぬが確かめさせてもらった」

 

 西王母は熊将ユウショウに手を向けると、

 

「この蘇熊将ソユウショウは齢二十二にして、白虎派第七世代の筆頭を務める男じゃ。こやつと対等に渡り合える者は、我が派にも数名しかおらぬぞ。大したものじゃ」

「オッサン、二十二だったのかよ! 全然そうは見えねえぞ⁉︎ でけえガキの一人や二人はいそうなツラしやがって!」

 

 この失礼にも程がある言い様にも熊将はなんの反応も見せず、言葉を繋いだ。

 

岳師叔ガクししゅくは俺が子供の頃からの憧れだった。師叔がお前を鍛えたというなら、お前が自我を失う事がなくば、手を出す事は控えよう」

「何だあ? 今から続きをやってもいいんだぜ?」

「ちょ、落ち着いてよ、拓飛」

 

 慌てて凰華オウカが取りなした。

 

「今、成虎めは何処いずこにおる?」

「知らねえ。あのオッサン、ちょこちょこ住処すみかを変えてたからな」

「ふむ、あやつらしいの。仕方あるまい」

 

 西王母は残念そうな表情を浮かべると、視線を拓飛に戻した。

 

「さて、話を戻すかの。先程の青い衣の者どもは東の守護を担う、青龍派の門人じゃ」

「青龍派……!」

 

 拓飛の眼が殺気を帯びた。

 

「我が白虎派と青龍派の間では二年ごとに互いの本拠に赴き、交流試合を行なっておる。表向きは互いに研鑽を積み、よしみを結ぶという名目じゃが、実際の目的は敵情視察じゃ」

「それで奴らは、今ここに向かって来てるってワケか」

「そうじゃ。そこで拓飛や、そなた試合に出てみぬか? 無論そなたの左腕を斬った小僧も出場するぞ?」

 

 凰華が拓飛の顔色を窺うと、拓飛は口の端を持ち上げた。

 

「てめえらの縄張り争いに興味はねえが、乗ってやるぜ。あのスカしたガキにキッチリ借りを返さねえとな……!」

「ホホ、それは重畳ちょうじょう。何しろ人手が足りぬのでな」

「人手が足りないって、そんな事があるんですか?」

 

 凰華が口を挟むと、西王母が答える。

 

「うむ。試合は第七世代の弟子、五人で行う取り決めなのじゃが、そこの熊将が出たがらんのでな」

「申し訳ございません、西王母さま」

 

 熊将は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「どうしてですか? 熊将さんの腕なら、どんな相手でも大丈夫そうですけど」

「困った奴じゃ。前回の試合で因縁を結んだ相手が来れぬと知ってヘソを曲げておる」

 

 拓飛は熊将の気持ちが分かった気がした。自分の認めた相手が来れないなら、やる気も出ないというものだ。

 

「いいぜ、熊のオッサンは休んでろ。俺が五人抜きすりゃ済む話だ。……いや、待てよ?」

 

 拓飛は凰華の方に向き直ると、ニッと笑った。

 

「凰華、おめえも出ろ」

「ええっ? ど、どうしてあたしが……」

「奴らの中に女が一人いたろ。俺は女とは闘わねえから、おめえが相手しろ。あの女さえ倒してくれりゃ、後は俺がまとめて片付ける」

「ちょっと待ってよ、急に言われても……」

 

 凰華が慌てて両手を振るが、拓飛は相変わらず能天気な笑みを浮かべている。

 

「なーに、誰がおめえに技を教えたと思ってんだ。楽勝だろ、あんな奴ら!」

「それはよい。成虎の弟子と孫弟子の腕前を見せてもらおうかのう」

「西王母さま! 孫弟子だというなら、あたしは第八世代ではないですか⁉︎」

「構わぬ。元々そなたらは正式な白虎派の弟子ではない。女子おなごが細かい事を気にするでないぞえ?」

 

 凰華は断ろうにも断れなくなってしまった。

 

「よっしゃ! そうと決まれば、まず腹ごしらえだ! バアさん、なんか食わせろ!」

「よかろう。熊将、案内いたせ」

「はっ」

 

 拓飛は熊将に連れられ鼻歌まじりで出て行ったが、凰華は立ち止まったまま動こうとしない。

 

「なんじゃ、そこまで出たくないと申すか。であれば無理強いはせぬぞ?」

「……いえ、西王母さま。お話があります」

 

 凰華は真剣な面持ちで口を開いた。

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