におい
掲載日:2020/06/19
仮に
真実というものがあるなら
この生活こそ
それだろうとおもう
まいにち
きまった時間に
米を研いでいる
ひとの帰りをまちながら
夕餉のしたくをする
子はソファで穏やかにねむり
いずれにおいに目を覚ます
もしくは
玄関が開く音に
消防車のサイレンに
炊飯器のわめきに
仮に
真実というものがあるなら
それは地下深くのものではなく
ずっと身近な
まるで俗っぽい愛でないと
やがて繰り返す季節みたく
生活の音楽でないと
わたしは
生活のなかに
ひとすじの光明をみている
みその香りは真実然で
営みはつづく
玄関が開く
六時のサイレンがする
不幸なニュースが流れる
コンロの火をとめる




