MOKOMOKO
バレンタインデー。
登校して教室に入り自席に着くと、待っていましたとばかりにクラスメイトの女の子カテリーナが、赤と緑を基調とした巨大な包装箱を抱えて寄ってきた。
「義理なんだからね……」
といって、机の上に置いた。
「……デカくないか」
「そんなことないわ」
前が見えないほど大きな箱だ。
「もらっておいて文句なんて言わないで」
「今とつぜん置かれたんだが……」
大きすぎて邪魔なので、床に置こうとした。
カテリーナが真顔でそれを見つめてくる。
「この人、なんで贈り物を床になんて置こうとするのだろう」
「心の声みたいな独白やめろ。……床でなきゃどこに置くんだよ」
「……安全な場所に。大切に置いてちょうだいね。弾けるかもしれない……」
「は・じ・け・る……(;´・ω・)」
何入れたんだ。
「気になる? 気になる? なら開けましょうよ」
「気になるのに、なんだろう開けたくない……後にするわ……」
そういってロッカーの上に置いた。
授業中、彼女は何事もないかのように平然としていた。
しかし放課後、帰り支度をしていると、
――チラチラ|д゜)見てくる。
「気になる? 開ければいいじゃない。気になるでしょう?」
「お前のチラ見の方が気になるから……」
包装紙を剥がそうとした。
カテリーナが真顔でそれを見つめてくる。
「この人、なんで贈り物を破って開けようとなんてしているのだろう」
「だから心の声みたいな独白やめろ。……わかったよ」
包装紙を丁寧に解くと、もこっと衣類の生地が出てきた。
「セーター……?」
「そう、全身に着るセーター。手作りなの。体いっぱいに感じられるのよ。(わ・た・し・を)」
「いま、口パクで何言った!? 義理設定どこいったんだ……」
カテリーナが頬をふくらます。
「まだ、感謝の言葉を聞いていない」
「……ああ、一応、ありがとう」
といって再びしまおうとした。
カテリーナが真顔でそれを見つめてくる。
「この人、なんで贈り物を箱の中になんて戻そうとしているのだろう」
「独白やめろって。……なんでだよ、ちゃんともらっただろう」
「着て欲しい」
「着ねえよ、もらったものその場で着ないだろ、ふつう」
「そんなことない。マフラーやセーターって、もらったら、その場で着たりする」
「……(´・ω・)」
「……(´・ω・)?」
「へんな顔で見返すな」
「あなたが先にしたのに」
しぶしぶ着ようとしたが、着るべきとっかかりが見つからない。
「背中にチャックがついているの」
「なぜ全身スーツ的設計……(;´・ω・)」
「その方が暖かいでしょう? それに、作った人の想いが感じられる。全身にびしびし伝わっていくの。(わ・た・し・と・い・う・そ・ん・ざ・い・が・う・ふ・ふ)」
「口パクパクさせて最後に笑うとか怖い……」
着てみると、遊園地にいる等身大のキャラクターみたいにもこもこになった。
カテリーナが満足そうに顔を赤らめる。
「あの……」
彼女がモジモジし始めた。
「……な、なんだよ」
「義理、なんだからね?」
「……っ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」
全身のもこもこがふるえる。