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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

繋いだ手

カチッ、カチッ

放課後の夕暮れ、赤く染まった教室では二人の女子生徒が黙々と作業を続けている。

「ねぇ、ねえってば」

片方の女子生徒がもう片方の女子生徒に声を掛ける。

「なにかよう。今忙しいんだけど。どうしても今じゃなきゃダメ?」

声をかけられた女子生徒は作業をさせられていることへの苛立ちからか、かなり厳しい口調だ。

「今じゃなきゃダメ」

それでも声を掛けた女子生徒は怯まずに言い返す。

はぁ、そうため息をつき声を掛けられた女子生徒は手に持っていたホッチキスと書類を置いた。

「それで、何のようなの。」


「あのね、わたし古賀奏は古河翠のことが好きです。」


「えっ…」


声を掛けられた女子生徒こと古河翠は言われたことの意味を理解できず思考が停止した。けれども頭の中では先ほどの告白が繰り返される。


どれくらい経っただろうか。翠は先ほどの言われた言葉の意味をやっと理解し、いつものクールな彼女からは想像できないくらいに顔を真っ赤にして狼狽えていた。

別に奏のことは嫌いではない。寧ろいつも一人でいる私に毎日話しかけてくれる彼女にはかなり好感を持っていた。けれどもまさか告白されるとは思ってもいなかった。


「やっぱり女の子に告白されるなんて嫌だよね。今日のことは忘れていいよ。」


声を掛けた女子生徒こと古賀奏は寂しそうな顔をしながらも、何事もなかったかのように作業を続けようとホッチキスを持とうとした。

しかし、その手の上には翠の手があった。

「ずるい。ずるいよ勝手に私の気持ちを決め付けて勝手に忘れろなんて。」


「えっ」


今度は奏が狼狽えさせられる番だった。


「奏はいつもそう。勝手に私の気持ちに入ってくるのにこっちからは踏み込ませてくれない。だから奏が私のこと好きなんてわかるわけないじゃない。好きなのは私だけだと思っていたのに。この想いは絶対に秘密にしておこうと思ったのに。」


翠は奏の手を掴むと、いつものクールで無表情な顔を涙で歪めながら、今まで自分の中で単なる友人としての好感だと否定してきた奏への想いをぶちまけた。


「すき、すきなの。かなで」


たどたどしく、けれど想いを込めて発せられる言葉に奏は翠の想いを感じた。

「ごめんね、わたしも好きだよ翠。」

奏は翠の顔にそっともう片方の手を置く。翠は恥ずかしさに少し身じろぎしながらも涙で少し赤くなった目をとじた。

二人の手はいつまでも離れない。

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