寝起きの会話
毎度毎度、端末っていうのが分かりづらいので開き直ってスマホってことにしちゃいます
食卓の椅子に座ってスマホをいじる。
今は太陽が昇る時刻より3時間は早い。
窓から覗く暗闇が、家の外はまだ真っ暗なことを教えてくれる。
今起きているのはほんの一部と俺くらいだろう。
その証拠に周りから一切の活動音も聞こえてこないようで、少し不気味に感じる。
「彼女が起きるまで暇だな」
視界の左端には、先ほど草原で拾った少女がベットの中で規則正しい寝息を静かに立てている。
土に塗れた汚いままの格好でベットに入れるのはどうかと思ったが、まあ今回はしょうがないだろう。
「掲示板でも見よっかな」
LIMEを起動する。
いつもの緑色の画面になった。
「どれをみようかな」
スクロールして面白そうなタイトルを探す。
想像してたより沢山のスレッドが並んでいた。
「おっ」
【俺たちが】攻略状況共有スレ【攻略組だ!】
気になって開いて見る。
攻略に役に立つ事が書いてありそうだ。
【俺たちが】攻略状況共有スレ【攻略組だ!】
1:名無しの攻略組
やっと家クエスト終わった!たぶん10人目くらい
2:名無しの攻略組
おめ
3:名無しの攻略組
家建てるとしたやっぱり広場の近くがいい?
4:3
その方が後々便利らしいぞ。あと神殿に近いとクエスト受けに行くのが楽
5:名無しの攻略組
たしかに。俺もそうしようかな
6:名無しの攻略組
クエストツリー見たけど、家クエの次に出てくる〈兎を10匹倒す!〉をクリアして、その次のクエストをクリアすると魔法スキルが1つ貰えるっぽい。
7:名無しの攻略組
マ?
8:名無しの攻略組
やっと魔法が使えるのか!!
9:6
そもそも クエストツリーって何?
10:名無しの攻略組
神殿に行けば詳しく説明して貰えるぞ。簡単に話すとこのクエをクリアすると次はこのクエストが受けられます、ってのが分かりやすく表になってる。
11:10
サンクス
12:名無しの攻略組
選べる魔法って何があるか分かる?
13:12
火属性魔法・水属性魔法・風属性魔法の中から1つ選んで、その属性の魔法が使えるようになるみたい。
14:名無しの攻略組
あと治癒魔法もあるぞ
15:名無しの攻略組
でも治癒魔法は取る人少ないだろうな。
16:15
なんで?
17:名無しの攻略組
そりゃ治癒魔法だと攻撃できないじゃん?序盤はそもそも怪我なんてする機会が無さそうだし。
18:名無しの攻略組
草原に出てくるのが兎しかいないもんな。
19:名無しの攻略組
後々重要になってきそうね。
20:19
ほんそれ。
「へぇー魔法スキルもらえんのか」
結構大事な事を聞いた。
情報はやっぱり大事なんだなって。
「こまめにチェックしとくか」
それにしてもやっぱり早い人はどんどん先に進んでるんだな。
俺も遅れないようにしなきゃ。
他にも気になるスレを見つけた。
溜まっている分を消化していくように、次々とスレを覗いていく。
「みんな結構書き込んでるんだなぁ」
俺も今度やってみよう。
「…んんっ…」
女性の間延びした声が近くから聞こえてくる。
「あっ、そういえばベットに寝かせたままだった」
うっかり失念していた。
スレを消化するのにかなり熱中してたみたいだ。
「起きた?」
「………?」
彼女はゆっくりと上体をおこした。
ぐしゃぐしゃの髪に、ぼーっとした焦点の定まらないままの眼をしている。
頭の半分が暖かい泥のような無意識の領域に留まっていて、いかにも寝起きです。みたいな顔をこちらに向ける。
「…っ!」
意識が覚醒したのだろうか。スイッチを入れられたかのように彼女は後ろに飛び退いた。
だがベットは部屋の隅に置いてあるので、必然的にそのまま壁に頭をぶつけることになる。
ごん!!
「いった!」
鈍い音がした。
彼女は頭を抱えながら身をかがめ、警戒しながらこちらを伺ってくる。
「あ、あなたは……?」
「……覚えてない?草原で疲れて倒れてた君を俺の家まで運んできた」
ちょっと嘘をついた。
「えっ、それは、ありがとうございます?」
あんまりはっきりしない返事が返ってきた。
「まあまずは昨日の事を思い出してくれ。それまではここに居て良いから」
「は、はい」
おずおずとしながらも思い出そうとする少女。
実は人見知りだったり?
「うーん…」
彼女の唸る声が家に響く。
「うん?あれ?」
急に戸惑いの声をもらす少女。
小さく呟かれた声がギリギリ聞こえてくる。
「確か私は兎を狙って追いかけてて、その途中に誰かと会った?
その人に助けを求めたけど断られて。
少しからかわれたところで体力の限界になって。
確かそこで寝ちゃったんだっけ。
うーん…少し年上っぽい男の人だったような……」
そこでこちらを見てくる彼女。
目があった。
「ってそれあんたじゃないの!!」
「…おう」
「何が「倒れたから助けた」よ!
あんたのせいでしょ!!!」
荒ぶるツインテール。
彼女の二房の金髪がセリフに合わせて慌ただしく揺れている。
「まあ待て。どちらにせよ俺が居なかったらどうなってたか分かってるのか?」
冷静な態度を装って自信満々に言ってみる。
「むむ」
しゅん。
勢いを失うツインテール。
「確かに…あなたが居なかったら私は今ごろ草原で夜を越してたわね…」
彼が私を助けてくれた……とつぶやく彼女。
どうやら真剣に考え直してくれるようだ。
ただ騙されただけともいえるが。
タイトル変えました!
なんかもっといい案あったら教えてください