お昼ご飯を食べようと思ったら
注文の列に2人で並ぶ。
メニューを見ると結構な種類があった。
兎肉の唐揚げ定食、
兎肉の生姜焼き定食、
兎肉のステーキ定食、などなど。
「全部兎肉なんだな」
まだフィールドには兎とオオカミしか実装されていないのだ。
食堂で食べられるのが兎肉だけというのも当たり前か。
「唐揚げ定食にしようかな」
「じゃあ私も同じので」
食堂の調理場に立つおばちゃんに注文する。
「はいよ」
おばちゃんから手渡された、ご飯が盛られた丼ぶりと唐揚げの乗った皿を自分のトレーにのせる。
手に持ったトレーから唐揚げのいい匂いがふわっと漂ってくる。
「すごくおいしそうだな」
「だろ?うちの一番のおすすめだ!」
おばちゃんがサムズアップして言ってくる。
ハハ、と笑って返しておく。
自分の左で同じようにエリスが受け取っているのが見える。
食堂の奥の方で2人分席が空いてるのが見えたのでそこまで移動する。
エリスも俺の前の席に腰を下ろした。
唐揚げ定食を食べながらクエストの話をした。
「そういや進捗はどうなの?」
「クエストの話?さっき〈オオカミを5匹倒す!〉を受けたとこだよ」
例の魔法クエストだった。
朝別れてからもうそこまでいくとは。
「お、じゃあ一緒のとこだな」
「ミナトに追いつこうと午前中頑張ったから…」
さらっとそんなことを言ってくる。
「へぇー。ちなみに魔法は何取る予定?」
「それが治癒魔法にしようかなって」
「治癒魔法?そりゃ珍しいな」
「掲示板で見たけどこの後大事になってくるんでしょ?治癒魔法って」
「まあそうだろうな」
ほとんどの人は攻略を進めるために他の3属性魔法を優先する訳だが。
そこで唐揚げをつまむ箸を止め、下を見て急に身じろぎするエリス。
心なしか顔が赤く見える。
彼女が顔を上げた。
さっきまで軽く結ばれていた口を開く。
「それでさ、良かったら一緒にパーティ組まない?」
「え?」
「治癒魔法が使える人って結構貴重なんでしょ?私きっと役に立つよ?」
「お、おう」
エリスがずい、と身を乗り出してきた。
「そりゃもちろんいいけどさ、逆にエリスは俺と組んでも良いの?」
君を欲しがるパーティーは他にもあるかもよ。
暗に仄めかしてそう伝える。
そう言ってくれるのはありがたいと思うが。
現時点で俺はレベルが高い訳でも強力なユニークスキルを持っている訳でもない。
「私はミナトがいいの。あなたとパーティーを組みたいの。」
俺の目を貫くかのように彼女の青く澄んだ瞳がこちらを見つめてくる。
真面目な顔をしたエリス。
見つめられるこっちはかなり恥ずかしい。
「それは、どうして?」
つい聞き返してしまった。
これは悪手だったかも、と少し焦る俺。
だがエリスは、にへらと表情を崩して言う。
「あなたに助けてもらったのもあるけど、ミナトは何か持ってる気がするんだよねー」
「何か?」
「うん。何か。」
「そっかー」
前にもどっかで……ああオスマンか。
あの男にそう言われたのを思い出す。
2人が食べ終わってからも、もう少し座って話をしていたら
「よおミナト。久しぶりだなぁ!」
そこで俺の左肩にどんっ!と手が置かれた。
大きくてごつい手だ。
この声は、と思い後ろを振り向くとやはり例の男がそこにいた。
「おお、オスマンじゃねーか。どうした」
「どうしたじゃねーよこのモテ男!可愛い女の子と昼飯とはやるじゃねーか!!」
相変わらずの大声だ。
「モテ男?俺のことか?」
「当たり前だろ。お前以外に誰がいるってんだ」
そこでエリスを見やるオスマン。
と思ったらこっちに近づいて俺の耳に小さな声でささやいてくる。
「…もうあの女とはヤったのか?」
「何を聞くかと思えばそれかよ!…んな訳ないだろ…」
まだまだだなぁ!とか言ってくるオスマン。
とそこに1人の女性が近づいてきて、そいつの頭を剣の柄で思いっきり殴りつけた。
がっきーん!!
聞いてるこっちが痛々しい、やばい音が鳴った。
頭を両手でおさえてしゃがみ込むオスマン。
まじでよく耐えたな。
「何他のパーティーに迷惑かけてるんですか…」
背が高い、グラマラスで綺麗な女性だ。
腰までかかる長い髪が大人の魅力を引き立てている。
だがその顔は全く笑っていない。
綺麗で曇りひとつない笑顔だが、それがむしろ恐ろしく感じる。
「てめぇ、いきなり殴るなや!」
普通だったら倒れてるわあんなの!と立ち上がりその女性を見て叫ぶ男。
「それにな、こいつは俺の友達なんだ」
その言葉で女性が俺の方を見る。
ふむ。
「いえ、今のが初対面ですが」
「お、おまえ…」
知らない男に絡まれました感を出してそう言う。
女性がオスマンを睨む。
あっこれあかんやつや。
流石にオスマンが可哀想だ。
「というのは冗談です。俺とオスマンさんはフレンドです」
「あら、そうでしたのね。それは失礼を」
にこりとこちらに微笑みかけてくる。
その後オスマンとその女性、俺とエリスを含めた4人で立ち話をした。
ちなみに彼女はマーリンという名前らしい。
聞けばオスマンたちは普段4人のパーティーで活動しているらしい。
今日いなかった2人は別行動をしていたそうだ。
そのグループはみなレベルが高くかなり奥のフィールドまで進出している攻略組であって、それを聞いてオスマンたちの凄さを実感した。
ただの気のいいデカイおっさんだと思っていたのに。
2人と別れてから俺もクエストをこなそうと神殿から出て東のフィールドに向かおうとする。
ちょうど広場の途中でエリスが話しかけてくる。
「ねえミナト、あなたあの人達と本当に知り合いだったの?」
「ああそうだよ」
「だってオスマンとマーリンといえば攻略組のなかでも特に有名な人でしょ」
私でも知ってるくらいには、と言うエリス。
「まあ出会ったのは偶然のようなものだからな」
本当に偶然だった。
その時は彼がすごい人だなんて知らなかったが。
「そういや俺はこれから魔法クエストをこなしに東の草原地帯行くけど、エリスはどうする?」
スマホをチラ見する。
時計の針は14時30分を指していた。
「勿論ついてくわよ。だって、私たちは同じパーティー、でしょ?」
「そういやそうだな」
顔を少し赤らめて、顔を反らして言うエリス。
「おまえが恥ずかしがるとこっちまで照れるんだが…」
「別に恥ずかしがってなんかないし!」
「はいはいそうですか」
少し前の実装によって、草原に兎とは別の個体としてオオカミが現れるようになった。
草原のオオカミは群れることなく単体でウロウロしているらしい。
クエストがオオカミを3匹倒すのを要求しているので、2人で東の草原に行くことにした。
あと5話くらいで本格的に主人公が戦闘をこなすようになっていきます。
それまでは導入的な?
エリスはツンデレなはずなんだが。
デレデレじゃないか……




