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角の少女とふたつの竜  作者: 樹(いつき)
第三章 黒竜と白龍
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47.卒業式

雪のちらつく、シルトクレーテの町。

港町であるため、積もるほどの雪は降らないが、あれほど活気のあった市場も今だけは眠ったように静かになっている。

農作物や獲物がとれず、生鮮食品を取り扱っているのは一部の漁業関係者くらいのものであった。


そんなシルトクレーテへ、狩人の夫婦が訪れた。

ライオネルとマリアは、人気のない市場を抜け、魔法学校へと向かう。


今日はシルトクレーテ魔法学校の卒業式だった。

ホルンから手紙を受け取ったふたりは式に出席するため、こぞってやってきたのだ。


魔法学校の講堂では、盛大に式が行われた。

四年間成績一位で走り続けたホルンは、壇上で生徒代表の挨拶を述べ、滝のような拍手をその身に受けた。


入学したときとは見違えるほど身長が伸び、成人男性と同じほどの高さがある。

顔つきもしっかりと大人びた表情になり、少女だったころの面影を残しながらも、立派に育っていた。


卒業式が終わり、学校の校門前で、ホルンはふたりの姿を見つけた。

自分がもう充分に大人であることなど忘れ、涙ぐみながら走ってふたりに飛びついた。


「随分大きくなったな」

「あなたのことを考えなかった日はなかったわ。手紙を送っていてくれたから、元気にやっているんだろうと思って、邪魔をしないようにしていたのだけど、まさか成績一位で卒業するなんて、思ってもいなかったわ」

「ふへへ……」


ホルンのいつもどこか冷たさを感じさせるような態度はどこかへいってしまい、家族へ甘える様はまるで別人であった。


その様子をアレクシアとサイは遠巻きに見ている。


「……で、あなたは両親来ないの?」

「それ、わざわざ聞くかい?」

「お互い寂しいわね」

「一緒にしないでくれ」


アレクシアは空を見上げた。


「それにしても冷えるわね。ホルンに私の家でお祝いしないか聞いて来ようかしら」

「……なぜそれを僕に言うんだ?」

「買い出し担当ね」

「ふざけるな。なぜ僕が、って、おい」


アレクシアはさっさとホルンの元へ行ってしまった。

大きなため息をついたサイは、諦めたよう市場へ向かった。


アレクシアがマリアへお祝いの相談をすると、驚いた顔をした。


「本当にいいの? 私たちは構わないけど、そちらだって、お祝いがあるでしょうに」

「いいんです。むしろ、家族団欒を邪魔してしまって、申し訳ございません」

「そんな、邪魔だなんて。喜んで招待されるわ」

「ありがとうございます」


ふたりを連れて、ホルンとアレクシアは屋敷へ向かった。

首長の敷地内にあるアレクシアの屋敷に、ライオネルとマリアのふたりは言葉を失うほど驚いているようであった。

屋敷の扉を開くと、誰もいないはずの家から、恰幅のいい女性が、かしこまった服装で出迎えた。


「おかえりなさいませ」

「え、なんでマルセラが? 学校は?」


あたふたとするアレクシアを放っておいて、マルセラはホルンたちに声をかけた。


「ホルンちゃんと、そのご家族もようこそお越しくださいました。そろそろ帰って来るころだろうと思って、暖炉に火を入れておきましたよ」

「いや、あの、なんで」

「ささ、おあがりください。お嬢さま、お客さまを先に案内しないといけませんよ」

「え、ああ、はい、こちらへどうぞ」


アレクシアがわけのわからないまま、ライオネルとマリアを客間へ案内しているうちに、マルセラがホルンへ握手を求めてきた。


「ホルンちゃん、おめでとう。主席で卒業なんてすごいわ!」

「ありがとうございます。それよりも、どうしてここに?」

「あれ、言ってなかったかしら。おばちゃんね、あの子の魔法の先生だったのよ」


一瞬の間を置いて、ホルンはマルセラの言っている意味を理解した。


「そうだったんですか!? あんなに会ったのに、一度も言ってくれなかったじゃないですか!」

「ごめんね、忘れてたよ。おばちゃんね、あの子のお父さんに先生を辞めさせられちゃって、せっかくだからパン屋でもやろうと思ってお店を開いたんだ。それをあの子、自分のせいだとでも思ったのかね。定期的に顔を見に来てたから、そのたびに少しずつ魔法を教えていたのよ」


六年越しの謎が解けた瞬間であった。

なぜ貴族であるアレクシアがわざわざ町に出てパンを買っていたのか。

忘れかけていたことながら、つかえていたものがとれたような、すっきりとした気持ちになった。


しばらく雑談を楽しんでいると、サイがたくさんの食材を持って現れた。

アレクシアがお礼を言って受け取り、マルセラに手伝ってもらいながら、手早く調理が始まる。

屋敷の中に食欲を誘ういい匂いが充満していく。


食事は楽しく、朗らかに始まった。

アレクシアの屋敷の地下に貯蔵されていた果実酒などを持ち出して、全員がほろ酔い気分であった。


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