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角の少女とふたつの竜  作者: 樹(いつき)
第二章 シルトクレーテ
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28.新たなる友人

ホルンたちが帰っていると、部屋からにぎやかな声が聞こえ始めた。

大部屋だし、初対面の者たちが盛り上がっているのだろうか、と思ったが、よくよく聞くと、声の主がひとりだけであることに気がついた。


女性部屋には三人の女性がいた。

そのうちのひとり、背が低くてそばかす顔のローリィ・ファブリスは、ホルンやアレクシアよりもふたつ歳上だったが、まるで同年代のようにアレクシアに話しかけていた。

まだ喉の調子が悪いアレクシアは、微笑を浮かべて、彼女の話をただ聞いていた。


(あ、そうか。喋れないから話を切れないんだ)


そう思いながらどうしようかと眺めていると、彼女はホルンに気がついて振り返った。


「あ、おかえり!」


ホルンの眉がぴくりと反応する。

以前から知っている人かと思うほどに、なれなれしい。


「あなたの試合、見てたわ! とってもすごかった! 私、あなたのことが好きになっちゃった!」

「え、あ、はは、ありがとうございます」


苦笑いしながら、ホルンは返した。

今まで意識したことがなかったが、どうも、こういう押しが強い人は苦手だ。


「それでね、今アレクシアにも話してたんだけど、私、魔法ちょっとしか使えないんだ……。だから、どっちか教えてくれない?」

「私たちよりも先生に聞いた方がいいと思いますよ」


ホルンは無表情に淡々と返す。

この話が延々と続くのだけは避けたかった。


「それもそうだね!」


彼女は二カっと笑った。

楽しそうなのは何よりだが、ホルンは早くも部屋が共同であることを恨み始めていた。


彼女がもし、勤勉で慎ましい女性であるなら、この評価を改める必要がある。

しかしながら、第一印象は決してよくない。


今後、毎日顔を合わせると考えると気が重い。

これなら外のベンチで寝た方がいいかもしれないと思えるほどであった。


「私、友達いないから、こうしてふたりと友達になれて嬉しいの!」


(いつ、友達になったの……!?)


そう心の中で思うと、シロの大笑いする声が聞こえた。

他人事だと思って、気楽なものだ。


ちらっとアレクシアの方を見る。

微笑を浮かべてはいるが、明らかに疲れている。


ローリィは学校に通う目的が自分たちとは違うであろうことに、ホルンは気がついていた。

自分たちは勉強をするために来ているのであって、遊びにきているわけではない。


「……あの、今日はもう疲れてしまったので、私は先に寝ますね」

「そう、おやすみ! また明日ね!」


ホルンの様子を見たアレクシアも手振りで寝ることを伝え、彼女から離れた。


明日は早く起きよう。

そして、図書館にでも行こう。

そんなことを考えながら、ホルンは眠りについた。


どれくらい寝たか分からないが、突如、耳元で声が聞こえた。


「ホルン、起きよ」

「ん……?」


意識空間の自室のベッドで、ホルンは横になっていた。

そのとなりで、シロがホルンにささやいている。


「なんだか、こうして顔を合わせるのって久しぶりだね。どうしたの?」

「見てみよ」


画面に目をやると、外の様子が見えている。


「これって眠っている時も外が見えるの?」

「うむ。外から見るとどうなっておるかわからぬがな。今はそれはいいのじゃ。あそこ、あの荷物、ホルンのものじゃろう?」


驚くことに、ホルンの荷物がある辺りを、ローリィが漁っていた。


「え? あれ、ちょっと!? やめさせないと!」

「おちつけ。どうせ中身はほとんど空じゃろう。あやつが何を探っているのか知る方が優先じゃ」


お金が目的ではなさそうなのが、逆に不気味であった。

しきりに小物を取り出しては戻すことを繰り返しており、何かを探しているようにも見える。


「何を探しているんだろう……」

「推測じゃが、お主の身分を確かめたいのじゃろう。ここに一番の成績で入学しておるし、首長の娘の友人じゃから、何者であるか調べようとしておるのじゃ」


「うーん、荷物からわかることはないと思うけど、怖いから隠しておこうかな……」

「それがいいかもしれんのう。会ったその日にこんな強行手段に出るようなやつじゃ。何をされるかわかったものではない」


「変な人に目をつけられちゃったなあ」

「お主も苦労するのう」


「もう、自分のことじゃないからって」

「そう言うでない。眠っている間、あやつは妾が見張っておこう」


ホルンは口を尖らせながら、ベッドで横になった。

これからまた少しだけ眠って、夜明け前にシロに起こしてもらうことにした。



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