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角の少女とふたつの竜  作者: 樹(いつき)
第二章 シルトクレーテ
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21.観戦

生徒たちのざわめきを他所に、試験は始まった。

組み合わせの中から順番は無作為に選ばれる。

指定された組みは空高くに浮かぶ真四角の闘技場へ運ばれた。


試験の勝敗は、闘技場から落ちるか、審判であるボルスが続行不能と判断することで決まる。

怪我はしないように最大限の配慮がされており、治癒魔法や、衝撃を軽減する魔法が常にかけられている。


試験の様子は下にいる者たちにも見えるように、水晶を通して空中に映し出されていた。

みな、いつ自分の番が来るか分からない緊張感と、他の受験者たちがどのように魔法を使うのか気になって、目が離せないようだ。

そのため、自分たちの後ろで教員たちも見学していることに気がつかなかった。


教員たちも受験生に負けず劣らず、緊張していた。

怪我をする者が出ないように、いつでも動けるようにしておかなければならないからだ。


今回の試験の担当教員はカビーノである。

しかし、彼は自分から説明しても受験生たちに聞いてもらえない、とボルスへ代行を頼んだ。

ボルスも内情を知っているために、仕方なく進行係を引き受けた。


決闘に注目する受験生たちの背後で、クレイ学校長がボルスへと聞いた。


「これはどのような組み合わせなのかな?」

「筆記試験の成績が近い者で組んであります」


「ふむ、決闘というのも聞いた時は驚いたものだが、なかなかどうして、よい光景ではないか。見よ、みんなやる気に満ちておる」

「はい。悔しいですけど、カビーノの手柄ですね」

「ここ数年で一番いい光景に思えるよ」


クレイ学校長は満足していた。

それをこれほど単純明快に、受験者たちに熱意を沸き起こさせるとは、と目からうろこの落ちる思いであった。






そのうちに、試験は始まった。

決闘の組み合わせに指定されたものは、足元から淡い光の柱が出現し、それに沿って闘技場へと浮かび上がる。


最初の決闘は、両者とも緊張でがちがちになっていた。

水球と火球が空中でぶつかり合い、飛沫と水蒸気がもうもうと上がった。

そのせいで、共に相手を見失う結果となり、視界を完全に奪われた片方がよたよたと闘技場から落ちて、場外負けとなった。

慣れていないとはいえ、見ている方が目を覆いたくなる光景であった。


自分ならもっとやれた。

あそこをああすればよかったのに。

そのように考える者も少なくない。


二戦目は、魔法使いと魔法を使えない者とが当たった。

使えない者は、鎧と槍を装備しており、それらを駆使してどうにか攻撃をしないとならなかったが、連射の効く小粒の魔法で押し出され、場外へ落とされた。


これは、魔法を使えない者がいかに不利であるかを示していた。

特に、体力や武術に自信のない者は、絶望の淵に立たされていた。


十戦が過ぎたころ、初めて皆とは違う魔法を使う者が現れた。

それは、ドニ・オーレスである。

上半身は裸で、浅黒い肌にびっしりと青い入れ墨の模様が入っている。


対戦相手と向かい合い、彼が消えた瞬間、その様子を見ていた全員が呆気にとられた。

相手の後方の少し上に現れ、音もなく着地すると、流れるように首へナイフを当てる。


「こ、降参……」


相手には何もさせず、彼は寡黙に勝利した。


「今の、どうやったの?」


ホルンの知識では、何が起きたのかわからなかった。

高速で移動したのかと思ったほどである。


「あれ、転移ワープよ……。ちょっと間違えると、地面の中に埋まってしまったりとか、全く違う場所に飛んでしまうから、ある程度のズレを修正できるように高く飛ぶものなんだけど、だとしても、あんな正確な転移ワープは知らない……。たぶんだけど、あの体に書いてある入れ墨が補助をしているのでしょうね。当たらなくてよかった」


アレクシアは心からほっとしたように言った。


「あれって、魔法石はいらないんですか?」

「体を飛ばす魔法だから、内向的な魔力になるんじゃないかな、と思うけど……」


アレクシアは自信なく言った。

その辺りの区別は、一見しただけでは難しい。


(シロさんなら、あれ避けられますか?)

『誰に言っておる。空を裂く音で気がつくじゃろう。あの者にそれができなかったのは、鍛錬不足じゃ』


大胆不敵に言うが、実際にそれが可能な能力を持っている。

彼女が出られたらこんな試験は簡単なのだが、力はあっても調整が下手なシロでは、相手を一瞬で粉々に吹き飛ばしてしまうだろう。

それでは、試験どころではなくなる。


やがて、二十戦が終わり、ようやくホルンへと順番が回ってきた。

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