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聖王国連合軍(2)

「いけー」


 追撃に成功した聖王国軍の兵士が、西の城塞の内部に入るとそこは、高い壁で囲まれた空間だった。だが、その先には、別の城門があり、その城門はイアフリード兵が入るとすぐに閉じられた。そして、恐ろしい事に背後の侵入してきた城門が閉じた。


「しまった。閉じ込められたぞ」


 ようやく自分達が、罠にはまった事を理解する。だが、時はすでに遅く城壁の上には、弩を構えたゴーレム兵が矢を構えている。


「刃向う者には、死んでもらいます。投降する者は、武器を捨てて前に出てください。おかしな動きをすれば、全員に矢を放ちます」


 相手の指揮官らしき男が、そう言うとほとんど兵が武器を捨てて前へ出た。するとゴーレム兵が、前から現れて次々と兵士を拘束していった。




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「誘い込まれたか」


 ブレインは、何とか城門を破壊しようとするが、硬い城門はびくともせず、高い城壁を越える手段がない。


「ブレイン様。背後に。いえ北側より敵影です」


 予想外の報告にブレインも背後で戦局を見るミランダも驚いた。現れたのは、人も馬も統一した鎧を着こんだ騎馬隊で数は、千いるかどうかの部隊だ。だが、その位置取りは、丘の上にありその丘を勢いよく降りてきているのが見えた。


 兵と言うのは、前に向けて構えているため背後に備えるには、入れ替わったりする時間が必要になる。北側に陣を引いていたテラー王国の兵士は、背後からその騎馬隊に急襲されるとあっという間に大混乱に陥った。ろくに反撃する事もできないまま騎馬隊が、テラー軍の中を縦横無尽に走り回る。鋭いランスを突きつけられ、重装備にも速度を落とさない騎馬に跳ねられテラー軍は、潰走を始める。


 元々練度や士気が低いテラー軍は、他国に比べると寄せ集めの兵でありこうなるとテラー軍の指揮官も体制を取り戻す事は難しいのだ。


 混乱に陥った一角を席巻した騎馬隊は、荒らしまわるとすぐに退路を北に向け、砂塵と共に消えていく。テラー軍のいた場所には、大量の犠牲者が残っただけだ。


「いったいどこからあのような部隊が」


 ブレインが、そう言った時には、ミランダは、すでに切れていた。


「全軍に指示。全軍を持ってあの城塞を落すのじゃ」


 すで渡した指揮権を無視し、ミランダは全軍で城塞を攻撃するように指示した。逆らう者のいないミランダの発言に各国の指揮官も従う他ない。テラー軍が潰走したと言ってもまだ3万以上の兵士が無傷でいるので、それを使って攻撃するつもりなのだ。




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「あらら。あっさりと逃げちゃったね」


「ああ。あの辺の部隊は、士気も低そうだったからちょうど良いと思ったんだよ。それにしても予想以上にうまくいったな」


 君人が、和美の騎馬隊に指示を出したのは、先程の事だ。


「あっ。向こう側が一気に動き始めたよ」


 2人は、身を乗り出すように周囲を見る。確かに周囲から一斉に攻撃を始めたようだ。


「もう策も何もなく力押しって事だね。さすがにこうなると罠とかでも防ぎきれないな。仕方ない最後の仕上げにかかるよ」


 君人が、和美に合図すると和美は「了解」と答える。




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「押せ。押し込むのじゃ」 


 ミランダは、拳を握る。勇者達が、別行動を取り、魔王を倒す間にイアフリードを占拠する予定だったが、予想以上に時間を要している。未だにその手前の城塞すら落せていないのだ。


 城塞に取り付いた兵士達が、攻城兵器を作りだし、梯子を駆けたりと侵入を図るが中々、城塞に侵入できない。


「お、おい。あれはなんだ?」


 城塞への攻撃に集中している者達の背を襲うように空中から何かが飛来する。


「あれは、ドラゴン?」


 聖王国軍が、そう言うのも無理はない。飛龍に乗った戦士達が、空中から襲いかかったのだ。飛龍は、口からブレスを吐き、背に乗る騎士は、長いランスで頭上から襲いかかる。それに対して、こちらから攻撃しても武器は届かず、飛龍の硬い鱗は矢も跳ね返す。


 再び混乱に陥った聖王国軍は、城塞への攻撃どころではなくなる。凶悪な飛龍たちが、5百近くそらから襲ってくるとたちまちバラバラになって逃げだしたのだ。


 その様子を見ているミランダは、戦場を睨みつける。


「宝玉を用意するのじゃ」


 ミランダが、宝玉を使うように指示を出す。


「で、ですが、宝玉はこの先でお使いになるはずでは?」


 神官の一人が、諌めるが、ミランダはここで使うと宣言する。慌てて神官は、ミランダが言ったように宝玉を取り出しミランダに渡す。ミランダは、その宝玉を手に詠唱を開始した。


「風の精霊よ。古の契約に従いその力を持って悪を滅せよ」


 ミランダ、宝玉を両手で天に突き出すとその宝玉が割れる。すると遥か頭上に竜巻のようなものが現れそこに人の姿をした精霊が現れた。


「盟約に従い1つだけ願いをかなえよう」


 精霊は、ミランダに言う。


「あの城塞を攻め落とすのに力を貸してほしい」


「心得た」


 ミランダの願いを聞いた風の精霊は、そのまま宙を移動すると暴れる飛龍たちに向けて突風のような風を送る。さすがの飛龍たちもその暴風には、抗う事ができずほとんどが、城壁に叩きつけられた。その凄まじい力は、和美が作った竜騎士の大半を破壊した。


 味方の精霊が、やっかいな竜騎士を排除した事で、再び聖王国軍の士気があがる。さらに風の精霊は、その力で城門すら破壊して見せた。これまで何をしてもびくともしなかった城門が開けられたのだ。


「進め! 今こそ城塞を破壊するのだ」


 城門が破壊された事で次々と兵士が中に入っていく。だが、内部にも城門があり、再び袋小路となった。


「風の精霊よ力を」


 風の精霊は、すぐさま内部の城門も破壊して見せた。その奥には、先程突入して捕えられた兵士達が、猿ぐつわをされて転がされていた。


「仲間を助け出したぞ。ここを占拠するのだ」


 城塞内は、複雑な構造をしており、なかなか敵の指揮官がいる場所までたどり着けない。大勢が、内部で作業にあたり、敵兵や敵の指揮官を探すのだが、その姿は一向に確認できないのだ。


 そしてようやくその異常に気付いた時、嫌な地鳴りが兵士の耳に聞こえてきた。


「お、おい。この城塞、揺れていないか?」


 兵士が、上ずった声で言う。聞いた兵士も黙ってうなずく事しかできない。突如まるで、支えていた柱が全て抜けたかのような衝撃があり、巨大な城塞が、崩壊を始める。内部にいた大勢の聖王国軍の兵士は、その崩壊に巻き込まれがれきの下となる。


 すべての城塞が、まるで計算されたかのように折り重なるように崩壊し、1万人近い兵士が生き埋めとなった。


「汝の願いは、かなえた。さらばだ」


 風の精霊は、願いを聞き終えると姿を消した。確かに城塞は、破壊されたのだ。ミランダは、結局、多くの犠牲者をだし、切り札の精霊まで使ってせっかく落とした城塞は、大勢の兵士と共に瓦礫となった。


「お、おのれ。魔王め」


 ミランダは、地団太を踏む。これで4万もそろえた聖王国軍は、約半数近くを失った事になるのだ。


「ミ、ミランダ様。森の国より伝達。敵と交戦し敗北し、撤退したとの事です」


 追い打ちをかけるように遊撃に参加していた森の国の敗戦を知る。


「兵をまとめよ。一度編成をし直すぞ」


 ミランダは、そうは言ったが、すぐに編成などはできない事は理解している。だが、そうでも言わなければ、どうしたらよいのかを聞かれるだけなのだ。

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