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ジルバルダ軍来襲

 バルトフェルド達が、戻ったのはもう深夜の事だった。大輔とみずきに子供たちの事を任せる事に成功した君人は、静かに使い魔から報告を聞いた。


「村は、壊滅。そして、死体の山か……本当にハシブスカ達は、死んで当然だな。3人は、休憩してくれ。明日には、こちらに迫ってくるジルバルダ軍を追い返すつもりだから」


 バルドフェルド達は、恭しく頭を下げるとその場を去る。


「やっぱり、この世界の人って皆ひどい人なのかな?」


 和美が、君人の後ろから抱きつきながらそう聞いた。君人は、その和美の手を取り、ぎゅっと握り返し首を振る。


「違う。きっとだけど。全員がそうじゃない。だけど、目につく奴は、そんな奴ばかりだって事だ。だから世界を恨んじゃいけない」


 和美の握り返す手に力が入る。和美もそんな事は理解しているのだ。だが、確認しないと整理できない想いがある。


「そうだね。覚悟してたのにね」


「ああ」


 2人は、静かに目を閉じる。4人で覚悟を決めたあの時の事を思い出すために。



 翌日朝。起床した君人と和美は、大輔とみずきに城と子供をゆだねジルバルダ軍を追い返すと大輔に伝えた。最初大輔は、自分も行くと主張したが、じゃあ子供はと聞かれるとそれ以上返事できない。みずきも大輔が、今の状態で戦場に出る事を望んでいない事は、大輔も理解しているのだ。


「わかった。子供たちの事は、色々と考えてみるよ。その代り、危険になった時は、遠慮なく俺達を呼ぶって約束してくれ。仲間の側には、いつだって転移できるんだからな」


 4人は、パーティーを組んでおり、仲間が呼び出す事でいつでも駆けつける事ができる。だが、そのためには、仲間が呼び出さなければならないのだ。


「勿論だよ。だけど、僕と和美くんが、向かって心配はないだろう。それに危なくなれば、転移して逃げる事にするよ」


 和美も頷いているので、大輔は2人を信頼して送り出す事を決めた。


「大輔達は、どうやって子供たちを守るかを考えておいてね。僕らが返ってくるまでの宿題だからね」


 大輔は、君人に宿題を与えられ、苦笑するが今はそのくらいの方が、余計な事を考えずに済むと言う君人の配慮だと思っている。こうした配慮ができるのが、君人だと他の3人も知っているのだ。


「じゃあ。さっさとジルバルダ軍を撃退してくるよ。もうバルドフェルド達は、斥候に出ているから僕たちもそろそろ向かわないとね」


 君人と和美は、笑顔を見せて戦場に向かった。その笑顔は、城を出るとすぐに消え、冷めた頭をさらに研ぎ澄ませていく。そんな表情を見せる君人を少し心配しながら和美もゴーレム兵を率いて進軍する。


 和美のゴーレム兵は、軽装歩兵と重装歩兵の2つで構成されており、同じ意匠の鎧で統一されている。どちらの兵もフルヘルムをつけており、顔はまったく見えないが、完全に人型をしておりフルヘルムを取るとイケメン男子の顔がある。だからよほどのことがなければ、普通の兵士にしか見えずゴーレムだとは気付かないようになっている。

 しかもそれぞれを率いる部隊長ゴーレムは、名前を与えられ主である和美と会話する事も可能になっている。軽装歩兵隊の隊長ゴーレムをランスロットと言い。重装歩兵隊の隊長ゴーレムは、アーサーと名付けられた。ランスロットは、オリハルコンを使用し作られたゴーレムで使われている魔石も大輔が、深層で入手した大きな物だ。そして、アーサーは、アダマンタイトを使用し作られており、魔石はランスロットと同様に大きな物を使用している。


 今、行軍中の部隊は、ランスロットが率いる軽装歩兵隊50人とアーサーが率いる重装歩兵隊が50人と100人しかいないが、隊列も綺麗なまま行軍を続ける。ランスロットとアーサーは、共に馬型のゴーレムに騎乗しており、君人と和美をそれぞれ後ろに乗せている。


 そんな行軍中の2人の側に、いきなりフレイアが現れた。


「報告します。この先3kmほどの場所にジルバルダ軍が、展開しています」


「兵の数は? それと進軍中かな? それとも休憩中かな?」


「敵兵の数は、およそ600人です。現在は、休憩中と思われます。馬を休め食事を摂っているようです」


 少し考えた君人は、周囲の地形をフレイアに確認する。するとフレイアの説明にあった少し小高い丘に布陣する事を決めた。


「どうするつもり?」


「奇襲と言いたいけど。正面からやろうと思っている。丘に布陣してこちらの兵数が、向こうにはわからないように2列横隊で、準備してほしい。前面に重装歩兵を置き、後列に軽装歩兵と言う形でね。あと、フレイアは、バルドフェルド達と連携して丘に幾つかの仕掛けをしてほしい」


「かしこまりました」


 そう返事するとフレイアは、消える。


「向こうの方が、6倍多いけど大丈夫かな」


「君の作ったゴーレムってたぶん一般的な兵士くらいじゃ倒せないよ。それに君と僕が後ろにいるんだから大丈夫だろう。それよりも心配なのは、逃げた兵士を捕まえられるかだ。ゴーレムは丈夫だけど機動力と言う面では、まだ工夫が必要だしね」


 和美も材料と魔石があれば、数を増やせるが、素材はまた集めないといけない。側にあった鉱山は掘りつくしたので、少し遠くの鉱山へ向かわないと素材が不足しているのだ。


「まあ。最悪土でも砂でもゴーレムは、作れるけど。それってもう魔物と同じだからね」


 今回の戦闘の目的は、ジルバルダ軍を敗走させる事だが、正体不明の軍に負けた事にしたい。そうすれば、ジルバルダも警戒し、周辺の占拠も遅れると踏んでのことだ。


 君人は、和美に指示を出し、ゴーレムをジルバルダ軍を見下ろせる場所に布陣させる。丘の下側から見れば丘の上に見える兵は、先頭にいる兵だけになるが、丘の上からは、相手の全容が見て取れる。ジルバルダ軍の指揮をとっていると思われる男が、何か叫ぶとすぐにジルバルダの兵士は、隊列を組んだ。


「結構練度が高いな。結構手ごわいかもしれない。だけど、もう引く気はないさ」


 ジルバルダの指揮官が、丘の上に布陣するゴーレム兵の元に兵を殺到させる。徐々に丘を登る事で、隊列は乱れたが、それでも形を保ったまま丘の上までやってきた。だが、登り終える頃には、ほとんどの兵士が荒い呼吸をしており、辛そうに見える。

 重い鎧と剣や槍を持って丘を駆けあがる事は大変な重労働なのだ。


 そして、前面の重装歩兵ゴーレムが、その兵士達の剣や槍を盾で受けるとそれを押し返した。当然、下からよりも上から押した方が、力は強くシールドで押された兵士達が、丘を転がり落ちていく。重い鎧を着ていても転がり落ちれば、体中に傷を負う事になる。

 数回、そんな攻撃を見せるとさすがに相手も警戒してか無謀に突っ込んで来なくなった。敵の指揮官は、そこまで無能ではないと言う事だろう。


 ジルバルダ側も数回の戦闘でこちらの数を概ね補足したようで、次は数を活かして包囲しようと兵を展開する動き見せる。


「だけど、それは予想どおりの行動だよ」


 こちらを包囲せんとするジルバルダ兵は、ゴーレム兵の側面に回り込もうとしたあたりで、君人が準備させた落とし穴に落下する。向こうに気づかれないように土系統の魔法を使ってバルドフェルド達が作っていたが、これには大規模土木工事をした君人の経験が活きている。


 次々と兵が落下したのを確認した相手の指揮官も苛立ちを隠せないのか自身が、前に出て士気をあげようとする。


 ゴーレム兵たちは、重装歩兵が攻撃を防ぎ、隙あれば背後にいる軽装歩兵がその隙間から剣を突き出す。その連携は、さすがゴーレムと言った所であり、恐怖も感じずただ指示どおりに動く兵の強さでもある。徐々に敵兵だけが倒れていき、戦闘開始から15分ほどで相手の兵は、3割ほどが動けなくなった。


 ゴーレム兵は、相手に気づかれないように和美が、修復するので未だに全員が元気に活動中だ。疲れもしらないゴーレム兵が、徐々に戦況を有利にしていく。



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