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魔剣との出会い

 氷龍をダンジョンから解放した大輔は、ようやくひと段落したが、氷龍のいた奥の部屋で一本の剣と出合った。大輔が、その剣を手にすると何かがつながったような感触があり、急激に魔力を持っていかれた。その量は、かなりのものだったが、大輔にとってみればそれは困るほどの量ではない。


 大輔が、その剣を不思議そうに眺めていると後ろで見ている氷龍が、その剣の事を説明する。


「それは、魔剣じゃな。少々扱い難いものじゃが、便利な武器じゃ。確か……」


『はい。このように主と対話する事も可能です』


 氷龍が、説明を止める。そして、大輔の視線が剣に向けられた。


「会話ができる。つまり、人格と言うか知能があると言う事だな」


『はい。主の魔力をいただく事が、条件となりますが、独立した自我がございます。魔装と言っていただければ、剣のみにあらず全身をお守りする甲冑ともなりえます。その存在は、ただ主と認めた者のためにあり、主が倒れる時までご一緒させていただきます』


 大輔が、試しにと「魔装」と言うと剣から真っ黒な魔力が放出され、瞬く間に黒い甲冑が大輔の身を包んだ。


「ずいぶんと魔王っぽいデザインだな。もう少しこの棘のようなものを減らしてくれ」


『かしこまりました』


 すると鎧は、形状を変え黒騎士風のデザインへと変わる。威厳と言う意味では、先程の魔王っぽいデザインの方が高いかもしれないが、年齢的にはこっちの方がましだと大輔は判断した。


「これで良いか……」


『いつでも調整いたしますので、ご指示ください。それとお願いですが、普段から帯剣していただけると助かります。私は、常に魔力を蓄えておりますので、主の余剰分の魔力をストックさせていただきます』


 大輔の魔力量は、底知らずだ。だが、ストックできると言うならそれも悪くないと大輔は許可をする。


「いよいよ。王も本格的な魔王って感じだな」


「そうじゃな。我らの王なのだからそれくらい威厳があっても良いじゃろう」


 炎龍と氷龍も満足したのかそう言った。


「これで、西に向かう目的の半分以上は達したな。戦力は、十分確保したし、イアリスの中央にあるこの山脈までは、転移魔法を使えば数日で来ることができるようになった」


 大輔は、東端にあるイアフリードからこの中央山脈までの間の移動手段を手に入れた。後は、北と南だがさすがにそれは急いではいない。大輔が、西に向かう事に拘ったのは、イアリスの西の大国の1つである聖王国で勇者のジョブを得た者がいると言う情報を得たからだ。


 この情報は、各地を転々とする吟遊詩人から得たものだから、それが真実かどうかはわからないが、中央山脈の西側にある聖王国では、勇者の誕生を祝う祭典があったと言う。勇者に関する正確な情報は少なく、イアリスでも古い文献にしか登場しないのだ。


「王よ。俺達は、遠慮なく自由にさせてもらう」


「必ず約束は守るわね」


 ダンジョンの出口まで一緒に転移すると炎龍と氷龍は、姿を龍に変えて空に消えた。氷龍が、初飛行を楽しむために翼を動かすのに少々興奮していたが、側でそれを炎龍が茶化すと氷龍は炎龍に向けて強烈なブレスを吐いて威嚇していた。そのせいで山脈の斜面の一部が、氷結していたが、そんなことを気にする事もなく2体の龍はそのまま飛び立っていった。


「まったく。あれは、存在だけで周囲に影響を与えそうだな」


「はい。ですが、我らの中でもあの2人は、別格の力を持ちます。きっと王の助けとなりましょう」


 リエールは、2人の規格外の強さを見てそう評価する。


「そうだな。あの2人には、リエール達とは、また違った部分で活躍してもらう事になるだろうな。リエール。山脈を越え反対側の聖王国の手前まで移動するぞ。そこに転移しやすいポイント見つける」


「はい。かしこまりました」


 大輔は、再びリエールを影に潜らせると山脈を越える。頂上付近は、雪で覆われるほど高い山脈だが、空を飛べる大輔には、寒さ以外気になる事はない。


「勇者は、魔王と共に現れる。そして、魔王と雌雄を決する運命にある……か」


 山脈を見下ろしながら大輔は1人、文献にあった一文を口にする。現在、イアリスには、魔王であるドルガがおり、魔王のジョブを持つカリンがいる。そして、ラスボスと言うジョブを持つ大輔がいる。勇者が、魔王と戦う運命にあるとすれば、いつか必ず自分達は勇者と関わることになるだろうと大輔は考えている。


 東西を分断する中央山脈を越えると、そこは聖王国の領土だ。聖王国は、聖教と呼ばれる宗教を中心にした国であり、聖女と呼ばれる巫女がいる国でもある。聖女は、勇者を導き、勇者と共に魔王を倒すと言うのが伝説でもある。


(ドルガのいる魔王国は、現在人族に対して侵攻するような事はない。それにカリンは、俺と共にいて西側に向けて侵攻するような計画はない。この国に勇者が誕生したとして、脅威でもない魔王や魔族を攻める事があるのか? )


『答えます。聖女のジョブを持つ者がいれば、神託と言うスキルで魔王の所在を知る事ができます』


 魔剣が、大輔の疑問に答える。この声は、大輔にだけ聞こえており、心の中で会話しているような状態だ。


(なるほどな。聖女をパーティーに入れれば、神託を受けながら魔王の所在は知る事ができると言うわけか。だが、聖王国は、害のない魔王を倒すためにわざわざ勇者を派遣するのか?)


『答えます。聖王国は、聖教の信仰を軸に国家運営をしております。その教義に勇者信仰と言うものがあり、勇者は、悪の象徴である魔王を倒す唯一の英雄だと説いています。また、諸外国に対して勇者を抱えていると言う外交的な優位性を示し、他国に対しても聖教を広げたいと言う狙いがあります。ですので、魔王を倒そうとするのは、聖王国にとっては政治的にも重要な事となります』


(神託で魔王の所在がわかるとして、魔王はジョブの事を言うのか? それとも立場の事を言うのか?)


『わかりません。過去に同様な事案がないので、どのような神託が降りるかわかりません』


(まあ。それでも可能性は、2つだけだからな。ドルガのいる魔族の国に向かうか俺とカリンがいるイアフリードに向かうかのどちらかだろうからな)


 大輔は、いつか出合う事になる勇者に備え体制を整えるつもりでいる。できれば、穏便に済ませたいと言う考えもあるが、それが適わないようなら自分達を守らなければならない。


 聖王国の東の外れにあった山小屋を転移のポイントして記憶し、大輔は西への旅を一旦終了させる。転移のポイントは、わかりやすいはっきりとしたイメージが必要なので、意識しておかないと次ぐに来るときに困るのだ。ポイントを増やす度にその場所を明確に覚えておく必要があるのだ。


(ここには、できれば来ないで済むと良いのだがな)


 大輔は、この日の転移で山脈の反対側まで飛び、そこで1泊してから東へと転移を繰り返しながら帰還する。今回の旅で、新たに氷龍を眷属とし、魔剣を見つける事もできたが、最も重要な事は、魔剣から得た聖王国や勇者の情報だ。


(帰ったらまた準備をしないとな)


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