マリード城の強化(1)
聞けば、死んだヴァンパイアの王は、この2人の父親だと言う事だが、2人からしても無能な王だと言った。配下をうまくまとめられず、ただ自身の保身ばかりを求める姿に2人の子も辟易していたと言う。ヴァンパイアたちの中では、例え親子関係にあっても力こそが全てであり、そんな父親に不満こそあれ守るつもりはないそうだ。普段、自分の子供にも隙を見せない父親だったが、今回のことで隙を見せた事をチャンスととらえた2人が、王を始末した。
青年ヴァンパイアは、兄でヴァールと言う名で、女性のヴァンパイアは、妹でリエールと名乗った。
「大輔様を主とします。その命がグリモア様の配下として動けと言うのであれば、それに従いましょう。ですが、願わくばリエールは、主のお側にお仕えする事をお許し願えませんか? 我らは、双子と言う特性も持っており、どちらかが聞けば、それをもう片方にも伝える事が可能にございます。ですので、リエールをお側においていただければ、私やグリモア様への指示も容易となりましょう」
グリモアも伝達手段が、ないわけではないようだが、不満もないようだ。基本的に力関係で動くヴァンパイアのヴァールを筆頭として、その配下を組織できればグリモアの考えていた体制が取れる。
純血のヴァンパイアは、数が少なくこの城では、ヴァールとリエールのみと言う事だ。純血種は、能力が高く短時間なら太陽の光すら耐える事ができると言う。
「わかった。許可しよう。それとお前達2人は、俺の眷属とさせてもらう」
スキルを使った大輔の力が、2人に注がれると2人は、さらにその力を増していく。ヴァールがヴァンパイアキングにリエールが、ヴァンパイアクイーンと言う魔物に進化し、その力を飛躍的に高めた。
膝を折る2人に満足し、グリモアにヴァンパイアをまとめて組織化するように指示した。
「仰せのままに」
大輔は、マリード城の場所をグリモアに伝達してからリエールを連れてマリード城へ転移する。ちょうど、夕食の時間に戻ったが、突然、帰還した大輔に君人達は、驚いたが、連れているヴァンパイアクイーンに目が行った。
「大輔。しばらく留守するって言ったけど。どこで何をしていたのかしら?」
みずきが、少々ご立腹のようで、大輔の斜め後ろに立つリエールと大輔を交互に見る。
「初めまして。この度大輔様の眷属となりましたヴァンパイアクイーンのリエールと申します」
リエールは、丁寧な口調で自己紹介し、膝を折って他の3人にも忠誠を示す。
「ダンジョンでリッチを眷属にした後、南東の古城でヴァンパイアたちを配下にしたんだ」
大輔の説明に君人が頷く。
「大輔らしいね。それよりもせっかく夕食に間に合ったんだから一緒に食事をとろう」
「そうね。色々と聞きたい事もあるし」
君人が、パトリシアとフレイアに指示して大輔の席を作る。このテーブルには、眷属は座る事が許されていないので、リエールは、バルドフェルド達と一緒に別の席についた。リエールも君人の使い魔である3人に挨拶し、自分の立ち位置を模索している。
大輔の席に食事が並べられようやく夕食が始まるとその話しは、大輔と君人が出発してから今日までの事について報告する場となった。
君人は、出発してすぐにマリードの北西にある手つかずの山から木材や石材を入手し、さらに北西に進んだ場所で旧鉱山を見つけそこから鉱石などを持ち出したと説明した。
「どうにもね。奥にはそれなりの鉱石があったんだよ。きっと採算面か何かの影響で廃鉱になっていただけで、悪い場所じゃなかったよ。おかげで和美が望んでいた物を揃える事ができた」
君人の運もあってかわずか2日ほどで必要な資材を集め終えた君人はマリード城に帰還し、それからは、和美と共にマリード城を中心とした大規模外構工事に取り掛かった。すでにマリード城を造る際に経験しているため効率よく作業は進められ、瞬く間に旧マトレ村を含めた場所に延々と続く城壁と堀を完成させていた。
「門は、東西2か所に作らせてもらった。防衛上門は、あまり多くても困るし、かといって1か所と言うわけにはいかないからね」
用途を考えて西門と東門が作られマリード城を中心としたイアフリードの領地は、この城壁内と拡大された。この効果により、畑や森すら城壁内に取り込んだ巨大な要塞ができあがる。
「大輔が、言っていた墓地として旧マトレ村を選んだ。すでに地ならしはしてあるから後は、墓石を用意するだけにしておいた」
「さすがだな。仕事が早いと言うよりも、一足先までやってくれている。墓地の管理は、新たに眷属としたグリモアに任せるつもりでいる。あいつは、元リッチだが、逆に悪用しなければ適任だろう。夜の眷属達には、その墓地と東の森あたりに住まいを用意してほしい」
「夜の眷属ってリッチやリエールみたいなヴァンパイアの事よね」
和美が、確認を入れる。
「ああ。皆が、どう思うか正直心配だが、俺は、敵対するような連中は、多少厳しい対応をしても良いと考えている。だから俺達や俺達の国に悪さをするような輩は、グリモアの眷属にしてしまうつもりだ」
これは、簡単に言えば、敵兵を殺した場合、死後も兵士や魔物として使われると言う事を意味する。考え方によっては、死者への冒涜であり惨い対応と言える。
「私は、構わないよ」
みずきが即答する。
「だって、この世界はそう言う事が当たり前の世界なんでしょ。私達が、遠慮して配慮して気を使っても相手は平気でそうしてくると思うの。この前、何の関係もない子供を人質にして、何の落ち度もない国民を平気で殺す人もいるんだから。そんな人に気を使って大切なものを失うなんて私は、嫌だわ」
みずきの主張は、ここ最近の事を考えると3人には、理解できるものだ。同情や正義を語っても誰かが救われるような事にはならない。
「みずき。ありがとな」
大輔は、きっと自分への気遣いもあっての事だと感謝する。
「後で、グリモアとリエールの兄のヴァールを紹介させてもらうよ。それと城内の様子はどうだ?」
「えーとね。君人くんと和美ちゃんが、マリード城の外構工事を終えた後、作った民家に移ったよ。やっぱりお城暮らしは落ち着かないってお母さん達が言うから」
みずきの説明に母親達なりの想いを感じる。
「補足すると。マリード城の南北と西部に街となるだけの住居を作ったんだ。収容可能な人数は、現状で1万人ってとこかな」
君人が、外構工事について説明を始める。南北には、住居を中心とした街並みを作り、西部には商店などが入るように整備していた。すでに2つの門は、和美のゴーレム兵が防衛についており、ランスロットとアーサーがそれぞれの門を担当していると言う。
「それと僕の考えなんだけど、イアフリードには、戸籍を作るつもりでいるんだ。そして、1人1人に和美が作った身分証を与えるつもりだ。これがあれば、城門を越える事ができるが、これのない者は、ゴーレム兵に一時留め置かれる」
これは、敵方の密偵などの侵入に備えての事だと君人は説明した。高い城壁とその前に作られた水堀の影響で外敵は空でも飛べなければ簡単に侵入できない。そして2つの門には、ゴーレム兵が常に詰めており24時間体制で門の警備を行っているから潜入は簡単ではない。
「ちなみにその身分証は、本人以外が用いようとした場合には、トラップが発動するように作ってもらった。予定では、15歳以上の者には、身分証を与えるが、14歳以下の者は保護者の同伴を義務付けるつもりだ」
「なるほどな。それなら悪用もされないし、外敵にも利用される事はないか。やっぱり統治や法の関係は、君人に任せる事にするよ」




