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これからの道

「大輔君が、魔王じゃない……」


 千夏は、そう言うと


「ねえ。私もその四天王にできる?」


 カリンにそう聞く。


「えっと。どうかな?」


 カリンは、困って君人の顔を見た。


「勇者が、四天王ってのはどうなんだろうね。少なくても前例はないだろうけど」


 君人にもわからない。


「いいの。試してみて」


 千夏の熱意に負けたカリンは、四天王化のスキルを千夏に使うとすんなり、認められた。


【四天王背徳の勇者】


「うわ。背徳の勇者だって、でもなにかすごいスキルがついたよ」


 千夏は、四天王となった事で転移魔法や収納スキル、そして本来勇者が使える高度なスキルが使えるようになっていた。


「ある意味。堕天使だね」


 和美が黒く染まった勇者だと茶化す。こうした行為は、不謹慎でもあるようだが、暗い話題ばかりなので和美なりに気を使ったものだ。それは、皆に伝わっており、何とか希望を見出そうとしている。


「これで、少なくとも戦力は、確保できた。大輔やみずきくんほどじゃないけどある程度の事はできるだろう。とりあえず、聖王国軍の動きを確認し、それに備えよう。後は、勇者達が、意識を取り戻したら聞き取りをするって事でいいね」


 3人が頷くとすぐにそれぞれ役割分担する。君人は、一度存在毎消えたバルドフェルド達を作りだすと聖王国軍の動きを探らせるために派遣した。和美は、マリード城の修復とゴーレムを再結集し、戦闘に備える。カリンと千夏は、地下牢にいる勇者達の監視を担当する事になる。


 地下牢の担当になった2人は、互いの情報を交換しつつ仲間として信頼を高めようと努力する。特に千夏が、心機一転目的のために頑張ると宣言して以降、その目に力を宿した。


「ねえ。カリンちゃん」


「なんです? 千夏お姉さん」


「私、カリンちゃんの事ちゃんづけで呼んでいいのかな?」


「うーん。他のお兄さんお姉さんは、そう呼ぶので良いですよ」


 そう言って千夏は、カリンを抱きしめる。


「うー。こんな妹が欲しかったよー」


 じゃれながら2人が、会話していると勇者パーティーの1人が目を覚ました。


「こ、ここは?」


 自分の腕がない事を悟り、顔が青ざめている。かわいそうだが、回復させると面倒になりそうなので、腕はそのままにしてあるのだ。


「って千夏が、どうして?」


「冬真。何があったのか教えて」


 腕の傷がうずくが、冬真は勇者の力のためか意識はしっかりしているようだ。


「何がって、俺達が魔王の配下の女を何とか倒して、魔王に止めを刺そうってところで魔王が、突然豹変して、俺達は吹き飛ばされたんだよ。もう少しで倒せたんだがな……」


 冬真は、悔しそうに言う。


「馬鹿! あなたが、殺そうとしたの日本にいた時の私の同級生よ。倒してってあなたみずきを傷つけたの?」


 千夏がなぜ怒っているのか冬真は、ピンとこない。


「勇者が、魔王やその配下を倒すのは当たり前だろ。何を言っているんだよ」


「だから。魔王とかそんなんじゃなくて、あなたは、同じ日本人をただ殺そうとしているのよ」


 そこまで言ってようやく冬真は、首を傾げた。


「あれ? そうだよな。なんで俺が、同じ日本人を殺そうなんてするんだ?」


 何がそうさせているのかわからないが、冬真も何かに操られているかのような発言を繰り返す。


「それで、あなたは、みずきさんを倒したって事ですか?」


「あ、ああ。そうなるな。宝玉を使って何とか倒したんだ。とんでもなく強かったからな。俺達も切り札を使うほかなかったんだ」


 冬真の話しでみずきが、死んだ事がわかった。そして、大輔は、その後豹変し勇者達を攻撃したのだ。


「それで、その後大輔お兄さんは、魔王はどうしたのですか?」


「後は、わからないよ。俺達は、もう散々な目にあったからな。気がついたらここにいた」


 冬真は、そう答えた。カリンは、少し不満だったが、これで事実の一部が判明した。大輔は、みずきの死に耐え兼ねて暴走したか、本来のジョブの力を解放したのだ。


「ごめん。冬真には、悪いけどしばらく出してあげられない」


 千夏は、そう言うとカリンの後を追った。


「この事を君人お兄さんに伝えて、それから……」


 カリンの目に涙が溢れる。優しく厳しい姉のように慕っていたみずきが、死んだ事がわかったのだ。そして、どれだけ大輔がそれを悔いているのかもカリンにはよくわかったのだ。


「カリンちゃん」


 後ろから千夏が抱きしめるとカリンは、声を出してワンワンと泣いた。ようやくできた家族の死にカリンも耐えきれない想いがあるのだ。

 カリンは、泣くだけ泣き終えると涙を拭き、力強く立ち上がる。その目には、新たな決意と意志が感じられた。


 カリンからみずきの件を報告された君人と和美は、言葉少なくその現実を受け入れた。


「大輔の気持ちを考えたら何もかける言葉がないよ」


「みずき……」


 ずっと一緒にいるのが当たり前だった仲間の死を受け入れる事は容易でない。


「大輔お兄さんを探しましょう。そして、止めないとだめです」


 カリンが宣言する。


「止めるって?」


「きっと大輔お兄さんは、聖王国を。この世界の秩序を許せないと思っています。きっと、そんな理不尽な世界を壊そうとします。でも、それは、きっとみずきお姉さんのためなんだけど。みずきお姉さんが、絶対に望まない事なんです。だから、だから私達が止めてあげないとずっと……」


 せっかく決意したのにまたカリンの目から涙がこぼれた。気持ちがわかる和美も千夏も涙が止まらず、君人すら目頭を押さえた。


「そうだね。みずきくんがいれば、殴ってでも止めると言いそうだね」


 君人がそう言うと3人が、頷く。


「なら。僕らの道は決まった。さっさと聖王国を追い返して大輔を探す。そして、大輔を止めてやらないといけないね」


「そうね。大輔の事だからやると決めたらとことんやっちゃいそうだもんね。ある意味、本当の魔王にだってなっていてもおかしくないわ」


「昔から人の事には、敏感なのに自分の事はさっぱりなのよね。でも、いい加減自分の事にもしっかりしてほしいよね」


 それぞれが、それぞれの想いを胸に新たな決意を決める。


「大輔が考えそうな事を逆に利用するしかないな。聖王国あたりは、もう壊滅しているかもしれないな」


「壊滅って、そうね。最悪、関わった国は危ないわね」


「でもそうなると聖王国周辺にいる可能性が高いってことかな?」


 君人達の推測は、報復にでた大輔が聖王国近辺で暴れていると言うものだ。


「そのためにもまず、一刻も早く聖王国軍をどうにかしないとだめだね。そうしないとイアフリードが危険になるかもしれない」


 君人は、他の3人と相談し、聖王国軍に備える。


「もうすぐバルドフェルド達が、聖王国軍の内情を確認して戻ってくる。そうしたら次の行動に出よう」


「地下牢の勇者達はどうするの?」


 和美に聞かれた君人もあまりいい気分ではない。


「正直な所、決めかねている。みずきくんを手にかけた者を簡単に許せるほど僕は聖人君子じゃないよ。それに解放して余計な事をされたら困るからね。武器やアイテムは取り上げたけど何をするかわからない」


「私が、眠らせておきます。石にしておいてもいいですけど」


 カリンが、少々過激な事を言った。

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